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こたつの中で、足がぶつかった。
「今の、わざと?」
「違う」
「二回目」
「偶然」
「三回目」
「……寒い」
理由としては、弱い。
でも真白はそれ以上言わず、みかんを一つ取った。
テーブルの上には、すでに皮の山ができている。
数えてはいないが、減る速度が早い。
「今日、何個目?」
「覚えてない」
「三つ目」
「まだいける」
「止めないけど」
テレビはついているが、誰も画面を見ていない。
年末特有のざわつきが、音だけで流れてくる。
「この人、毎年出てるね」
「誰」
「今しゃべってる人」
「覚えてない」
「俺も」
それで話は終わる。
みかんの皮をむきながら、真白が言う。
「外、忙しそう」
「そう見える?」
「なんとなく」
「買い物袋、でかい」
「確かに」
「年末だから」
「また理由」
「季節もの」
真白は次のみかんをむきながら、少し考える。
「忙しくなくていい」
「うん」
「このままでいい」
「賛成」
こたつの中で、また足が触れる。
今度は、どちらも引かなかった。
「ねえ」
「なに」
「みかん、最後の一個」
「どうする」
「半分こ」
「切る?」
「むく」
「器用だね」
「たぶん」
皮をむいて、二つに分ける。
少し大きさが違う。
「どっち」
「小さい方」
「即答」
「大きいの、譲る理由がない」
「正直」
「今年は正直でいく」
「まだ終わってないけど」
「もう気分」
こたつの中は、暖かい。
外の慌ただしさは、ガラス越しで止まっている。
「年末ってさ」
「うん」
「何かしなきゃいけない気がする」
「する?」
「しない」
「じゃあ、しなくていい」
真白はみかんを一口食べて、満足そうに頷いた。
「甘い」
「当たり」
「いい締め」
「まだ締まらない」
「じゃあ、続き」
テレビの音と、みかんの香り。
特別じゃない時間が、静かに積もっていく。
年末は近い。
でも、この部屋は、まだいつも通りだった。