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#百合
うあな
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#ゆあんくん
モコビリ ❨低浮上❩
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数日後。
放課後の教室。
紬は窓際の席で、スマホを眺めていた。
悠生から来たメッセージ。
『今日、駅まで一緒に帰る?』
短い文章。
それだけなのに、何度も読み返してしまう。
「……何でこんな嬉しいんだろ」
小さく呟く。
「何が?」
突然、声がした。
紬は慌ててスマホを伏せる。
「うわ」
悠生だった。
「びっくりした」
「ごめん」
「いつからいた?」
「今来た」
「絶対嘘」
「ほんと」
悠生が笑う。
「帰ろう」
「うん」
二人で教室を出る。
階段を下りながら、紬が聞く。
「悠生ってさ」
「ん?」
「好きな人いる?」
悠生の足が一瞬止まった。
「急だな」
「何となく」
「いる」
即答だった。
紬の胸が、少しだけざわつく。
「……誰?」
「言わない」
「何で?」
「言いたくないから」
「ケチ」
「そういう問題じゃない」
紬は笑おうとした。
でも。
うまく笑えなかった。
「そっか」
「紬?」
「何でもない」
校門を出る。
紬は黙って歩く。
悠生が横を見る。
「どうした?」
「別に」
「さっきから変」
「……好きな人いるんだなって思っただけ」
「うん」
「どんな人?」
「優しい」
「他は?」
「ちゃんと人のこと見てる」
「ふーん」
「あと」
悠生は少し笑う。
「笑った顔が好き」
紬は黙った。
胸が苦しくなる。
聞きたくなかった。
でも。
聞きたかった。
「……その人、男?」
悠生がこちらを見る。
少し間があった。
「うん」
紬の足が止まった。
「そうなんだ」
「驚いた?」
「ちょっと」
「ごめん」
「何で謝るの」
「いや」
紬は前を向く。
男が好き。
それなら。
もしかして。
自分にも可能性がある?
そんな考えが浮かぶ。
でも。
同時に。
別の疑問が浮かんだ。
――誰が好きなんだろう。
翌日。
昼休み。
紬は教室の後ろを見る。
悠生が蒼真と話している。
何かを話している。
蒼真が少し笑う。
悠生も笑う。
紬は目を逸らした。
胸の奥が、嫌な感じになる。
また。
この感じ。
以前から知っていた。
悠生が蒼真を気にしているとき。
二人が話しているとき。
なぜか落ち着かない。
昨日までは、ただの違和感だと思っていた。
でも。
今は違う。
「……まさか」
紬は小さく呟く。
自分でも分かってしまった。
悠生が好きなのかもしれない。
放課後。
紬は一人で帰ろうとしていた。
悠生が追いつく。
「紬」
「……何?」
「一緒に帰らない?」
紬は一瞬迷った。
「うん」
二人で歩く。
いつもなら嬉しい。
今日は少し怖い。
自分の気持ちを知ってしまったから。
家の近く。
紬が立ち止まる。
「悠生」
「ん?」
「昨日の好きな人」
「うん」
「……俺が知ってる人?」
悠生は答えなかった。
それだけで。
紬には十分だった。
「そっか」
「紬」
「大丈夫」
笑う。
「聞かなかったことにする」
悠生は何か言おうとした。
でも。
言葉にしなかった。
家に帰る。
玄関に蒼真がいた。
「おかえり」
「ただいま」
紬は靴を脱ぐ。
蒼真が何気なく聞く。
「悠生と一緒だった?」
「……うん」
「そう」
蒼真はそれ以上聞かない。
紬も何も言わない。
でも。
その横顔を見ながら。
紬は初めて気づいた。
悠生が好きな相手。
自分が昔から知っている人。
そして。
悠生がずっと特別に見ていた人。
――蒼真。
紬は何も言わず、自分の部屋へ上がった。
コメント
1件
第27話、読み終えました。タイトル通り「気づいてしまった」瞬間が、とても丁寧に描かれていて胸が締め付けられましたね。悠生の「笑った顔が好き」という台詞、あれが効いてるなあと。紬が自分の気持ちに気づく過程の、ざわつきと怖さがじんわり伝わってきました。蒼真の存在が浮かび上がってくるラストも、静かで余韻が残ります…。続きが気になりますね。