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彼は、いつも。同じ笑顔で笑っていた。
その笑顔は優しい。
彼はクラスの誰かが落ち込んでいれば、隣に座って
「大丈夫?」という。
その一言は、誰よりも優しくて、温かい。
誰かが失敗すれば、「気にしなくていいよ」って笑う。
みんな、彼のことが好きだ。
優しくて、穏やかで、安心できる人だから。
――私も、そう思っていた。
あの日までは。
放課後、教室に忘れ物を取りに戻ったときだった。
誰もいないはずの教室に、声がした。
「もう、大丈夫だからね。」
優しい声だった。
誰だろう?とそっとドアの隙間から中を覗く。
そこにいたのは、彼だった。
窓際の席で、誰かと話している。
……でも、そこには誰もいない。
「苦しかったでしょ?」
彼は、まるで本当に“誰かがいる”みたいに、頷いていた。
「だから、終わらせてあげたんだ」
心臓が、大きく跳ねた。
何も考えられなかった。
「これでもう、傷つかなくて済むよ」
その笑顔は、いつもと同じだった。
なのに――
どうしてこんなにも、怖いんだろう。
ガタン
彼はこちらをじっと見つめる。
目を逸らしたはずなのに、また合ってしまった。
固まってしまい数秒の沈黙が続く。
それから、彼はゆっくりと微笑んだ。
「…聞いちゃった?笑」
逃げなきゃ、と思った。
それなのに、足が動かない。
彼は立ち上がって、こちらへ歩いてくる。
一歩ずつ、ゆっくりと。
「大丈夫さ。」
すぐ目の前で立ち止まって、そっと囁いた。
「君も、つらそうだからさ。」
その言葉に、息が詰まる。
「安心して?」
優しく、優しく、頭を撫でられる。
「ちゃんと、楽にしてあげるから、
――前の子みたいに。」
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