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第19話 - ＊

206

2024年11月24日

#純愛

#大人ロマンス

#大人の恋愛

#ドラマ

#短編

#ヒューマンドラマ

瑠璃マリコ

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瑠璃マリコ

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結婚前提の付き合いになったからといって、特に何かがガラッと変わった訳ではない。

その後も夫との穏やかな交際は続いた。

それから半年後、夫と付き合い始めて初めてのクリスマスを迎えた。

私達はクリスマスイブに一緒に食事に行く約束をしていた。

待ち合わせ場所はターミナル駅。

私は嬉しくて約束の時間よりも20分も早く着いてしまった。

周りを見回すと恋人と待ち合わせをしている人達で溢れていた。

綺麗に着飾った女性達を見ていると今日がクリスマスイブだという事を実感出来た。

約束の時間の数分前、夫が必死に走って来るのが見えた。

いつもは10分前に来ている夫が時間ギリギリに来るのは珍しい。

夫は息を切らしながら言った。

「遅くなってごめん」

「ううん、私も今来たところ」

私は嘘をつく。

すると夫はにっこり笑ってから、

「行こうか」

と言い、私と手を繋いで歩き始めた。

その時私の手が冷たい事に気づいた夫は微笑んで言う。

「今来たっていうのは嘘だな」

夫は私の手をギュッと握ると夫のコートのポケットへ入れてくれた。

あの時の手の温もりを私は今でも忘れない。

夫はこの日、高級ホテルのフレンチレストランを予約していた。

それを知り私は感動していた。なぜならいつもはカジュアルな店ばかりだったからだ。

パリッと糊の効いた真白なクロスのテーブル席に着くと、少し緊張気味にディナーを始める。

しかし美味しい料理はシャンパンのお陰でいつの間にか緊張は解け、とても楽しい時間を過ごす事が出来た。

最後のデザートを食べている時、私は用意していたクリスマスプレゼントを夫へ渡す。

夫はプレゼントを受け取ると嬉しそうに言った。

「ありがとう。開けてもいいかな？」

「どうぞ。気に入るといいけれど…」

夫は包みを丁寧に開けていく。

私が夫の為に選んだプレゼントは、紺色の生地に小さな植物柄の刺繍が入ったネクタイだった。

夫が勤める私立高校は進学校なので教師は皆スーツにネクタイが定番だ。ネクタイなら仕事にもしていけるだろう。

夫は植物柄のデザインを見るなり感激した様子で言った。

「植物柄のネクタイなんてあるんだね。ありがとう、嬉しいよ。大切にするね」

その後そのネクタイは夫の一番のお気に入りとなる。

すると今度は夫がバッグから小さ小箱を取り出して私の前に置いた。

「え？」

「それは僕からのプレゼントだよ」

「でも、プレゼントはこのホテルの食事じゃ？」

私はてっきりこの豪華なホテルでの食事がプレゼントだと思っていたので驚く。

「開けてごらん」

夫に促された私はコクンと頷くとリボンを解いて箱の蓋を開けた。

中にはベルベットのジュエリーケースが入っている。　一体何が入っているのだろう？

夫は私の指のサイズを知らないから指輪の可能性は低い。ピアスも開けていないのでピアスでもないだろう。となると、箱の中身はネックレスかブレスレットの可能性が高い。

無口で照れ屋な夫が一人で店に行きこれを買ってくれたのかと思うと胸がキュンと疼く。

例え好みの物じゃなかったとしても大切にしよう…..私は心に誓った。

そして「エイッ」と蓋を開けてみる。

するとそこにはキラキラと輝く美しいダイヤモンドのリングが入っていた。

「……！」

私はびっくりして思わず夫を見る。

「葉子、僕と結婚してくれませんか？　正直、君を幸せに出来るかどうかはわかりません。でも君の事はずっと大切にするつもりでいます。だから僕と結婚して下さい」

夫の言葉を聞きさらに私はフリーズしてしまう。

そこで何の反応もしない私を見た夫が焦り始めた。

「あれ？　もしかして…ダメかな？」

そこで私は急にハッとしてから慌てて言った。

「うぅん、迷惑じゃないです。あのっ、よっ、よろしくお願いしますっ」

そして私は頭を下げる。

夫は急にホッとした表情をしてから微笑む。そしてジュエリーケースから指輪を取り出すと私の左手の薬指にそっとはめてくれた。

奇跡的に指輪のサイズはぴったりだった。自分の薬指で輝く美しいダイヤの指輪を見て私は急に喜びがこみ上げてきた。

夫は今日この指輪を受け取りに行っていたので約束の時間ぎりぎりになったと言った。

私が指輪のサイズはどうしてわかったのかと尋ねると夫はこう説明してくれる。宝飾店のスタッフに私の身長や体重を聞かれ、そこからはじき出したサイズを選んだようだ。もし指に合わなければお直しに出す予定だったとも言った。

「お店の人、凄い！」

「本当だね。まさかぴったりだとは思わなかったよ」

夫は嬉しそうに笑う。

その笑顔に釣られて私もフフッと微笑むと、左手を挙げて指輪をシャンデリアの明かりにかざしてみる。

すると指輪の美しい輝きはシャンデリアの光を受けて更に一層輝きを増した。