テラーノベル
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ruruha
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コメント
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読み終えました……。この空気感、ものすごくリアルで胸が締め付けられました。「今日は遥の日だ」という空気が自然に広がる怖さ、誰も止めない同調圧力、そして遥が「泣かない」で耐えるラスト。ここに至るまでの傷の描写と、周囲が加点法で残酷になっていく様が生々しくて、読んでて息が苦しかったです。連載中の第22話、これからどうなるんでしょう……遥の視点がどこかで反転する瞬間が来るのか、気になって仕方ないです。
校舎に、噂が染みついていた。
朝、下駄箱の前を通るだけで、ひそひそと声が落ちてくる。
わざと大きめに、遥に届く高さで。
「また来てる」
「よく平気だよね」
「見た? あの腕」
「汚……」
笑い声。
誰かが咳払いをするふりをして、鼻を押さえる仕草をする。
遥は何も言わず、靴を履き替える。
その背中に、視線が突き刺さる。
教室へ向かう廊下。
すれ違いざま、肩がぶつかる。
わざとだ。
「邪魔」
「避けろよ」
「臭いの移る」
謝らない。
今日は、まだ、言わない。
一時間目が終わる頃には、校舎全体が出来上がっていた。
誰が合図したわけでもない。
ただ、“今日は遥の日だ”という空気だけが、自然に広がっていく。
二時間目の移動中、階段の踊り場で、囲まれる。
男子が数人。
その後ろに、女子。
スマホを構えたままの顔もある。
「ほら、脱げ」
遥の袖を引っ張る手。
抵抗すると、もう一方から腹に拳が入る。
「見せろって言ってんだろ」
シャツの下、腕、首元。
古い痣、新しい傷。
盛り上がった皮膚。消えきらない跡。
「うわ」
「キモ」
「なにそれ」
「人間?」
女子の声が、一番鋭い。
「汚い」
「触りたくない」
「病気じゃないの?」
遥の視界が揺れる。
足が一歩、後ろに下がる。
その瞬間、首に腕が回る。
締まる。
空気が、急に細くなる。
「逃げんなよ」
「まだだろ」
誰かが言う。
「殴れよ、遥も」
目の前に、同級生の顔。
殴られるのを待つような、楽しそうな顔。
「ほら」
「やり返せば許してやる」
遥の手が震える。
殴らない。
殴れない。
次の瞬間、頬に衝撃。
倒れかけた体を、別の手が支える。
倒さない。
逃がさない。
腹。
背中。
脚。
蹴る。
殴る。
「声出せよ」
「いつもみたいに黙ってんな」
遥の喉から、声がこぼれる。
「……ごめん。ごめんなさい。やめて……ごめん……」
そのたび、笑いが大きくなる。
「ほら、言えるじゃん」
「気持ち悪い声」
「女みたい」
女子が近づく。
覗き込む。
「その傷、全部自業自得でしょ」
「可哀想アピール?」
「同情されたいの?」
誰かがスマホを振る。
フラッシュ。
「拡散しよ」
「校舎全部に」
遥は、床に膝をつく。
首から手が離れる。
息を吸おうとして、むせる。
その様子を見下ろしながら、誰かが言う。
「次は、もっとちゃんとやろうぜ」
「今日はまだ軽いだろ」
チャイムが鳴る。
人は散る。
何もなかったみたいに。
廊下には、まだ声だけが残る。
「汚い」
「存在が無理」
「生きてる意味ある?」
遥は、立ち上がれない。
でも、泣かない。
ただ、次が来ることだけは、分かっている。