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放課後、いつもの相談室に、女子生徒が足早に入ってきた。顔はほんのり赤く、緊張と期待が入り混じっている。
「日下部くん……相談、聞いてくれる?」
日下部は腕を組んだまま、困ったように眉を寄せた。
「おう。なんでも言ってみろよ」
「私……好きな人がいるんですけど、その人にどう伝えればいいかわからなくて……」
日下部は少し固まった。
「好き……か。正直、オレ、そういうの苦手なんだよな」
彼女は少し悲しそうに笑った。
「でも、話は聞いてほしいんです」
「わかった。聞くだけならできる」
彼女はゆっくり話し始めた。
「一緒に話すと、楽しくて……でも、目が合うとドキドキして、何話していいか分からなくなって」
日下部は首をかしげる。
「オレはな……好きって感情、正直よくわかんねぇ。けどな、無理して話そうとしなくていいんじゃねぇか」
「無理しない?」
「そう。自然に。たとえば、相手の好きなこと聞くとか、一緒に笑うとか。伝えたいことって、言葉じゃなくても伝わる時もある」
彼女は目を輝かせてうなずいた。
「ありがとう。でも……やっぱり、告白とかはどうしたら?」
日下部は苦笑した。
「……そいつは、オレにもわからん。ぶっちゃけ、タイミングとか勇気とか、気合いだ」
彼は机を軽く叩く。
「オレも、失敗ばっかだ」
彼女は少し笑いながら、でも前向きな顔になっていた。
「じゃあ、失敗してもいいんですね」
「な。失敗も、経験だ。どう転んでも、お前はお前だ」
彼女は立ち上がり、軽く会釈した。
「日下部くん、話せてよかったです」
日下部は少し照れたようにうなずき、笑った。