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チャイムが鳴り、下校する生徒のざわめきが薄れていくころ、遥は後ろから制服の襟を軽く引っ張られた。
振り返ると、笑っていない笑顔の数人。
「ちょっと来いよ。……逃げたら倍やるから」
連れて行かれたのは、体育館裏。
足元は湿っていて、土とカビの匂いが立ちこめる。
「ほら、座れ」
座った瞬間、誰かの靴が肩を押し込む。
「四つん這い。……そうそう、“犬”はそうやって座るんだよ」
スマホのカメラが向けられ、シャッター音が何度も響く。
「おい、こっち向け。笑えって。ほら、“愛想笑い犬”」
笑えないと、頭を後ろから掴まれて強引に顎を上げられる。
「あー……ほんとブサイク。これアイコンにしよ」
ポケットから取り出したペットボトルの水を、
遥の髪の分け目からゆっくり垂らす。
「おー、ほらシャンプーのCM……じゃねぇな、死体洗ってる感じ」
髪が張りつき、首筋まで冷たさが伝わる。
さらに、上着の襟を持ち上げられ、呼吸が浅くなる。
「ほら、“やめて”って言えよ。声がキモいって証拠撮っとくから」
喉が圧迫され、かすれた声しか出ない。
それが余計に笑いを誘う。
鞄に手を突っ込まれ、中身を床にぶちまけられる。
中から出た折りたたみ傘を持ち上げ、
「これさ、傘じゃなくて“身代わり棒”だろ?これで殴られる代わりに守ってんの」
と、軽く肩を叩きながら馬鹿にする。
最後に、泥のついた靴底で、遥の手の甲を踏まれた。
じん、と痛みが走るが、動かない。
「痛いって言わないの?……やっぱそういうの、慣れてんだな」
撮影された動画と写真は、その場で数人のグループラインに送られていった。
「明日にはクラス全員と、隣のクラスのやつらにも回すわ。
“きも犬の水浴びショー”ってタイトルで」