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「……日下部くん、私、友達に依存しちゃうんです」
相談室の椅子に沈み込むように座った女子は、手のひらで顔を隠した。
「クラスの子と一緒にいると安心するんですけど、離れると不安で……。
LINEも何回も見ちゃうし、相手の気持ちがわからないと落ち着かない。
でも、こんなに依存してる自分が嫌で」
日下部は机に肘をつき、少し黙って考えるように視線を落とした。
「……安心ってのは、そりゃ悪いことじゃねぇ。でも、相手に頼りすぎるって思うなら……ちょっとしんどいな」
女子はうなずきながら、顔を上げた。
「はい。自分でも重いって思うんです。嫌われるんじゃないかとか、離れられたらどうしようとか、頭から離れなくて……」
「……そっか」
日下部は手を組んで、ゆっくりと机を叩く。
「依存って、相手が悪いわけじゃねぇ。自分が安心を求めすぎてるだけだ。
でもな、それが悪いことかって言われたら……別にそうでもねぇと思う」
「……え?」
「お前が不安になるのも、誰かを必要とするのも、人間らしいことだろ。
ただ、相手に押し付けると問題になる。そこを気をつければ、少しマシになる」
女子は小さく笑った。
「……少しマシになる、ですか」
「うん。全部なくす必要なんてねぇ。少しずつ、自分でも立てるようになればいい」
日下部は視線を外して、窓の外を見た。
「それにさ、相手だって完璧に頼られたいわけじゃねぇ。だから、距離を少しだけ考えてやれば、関係は壊れねぇ」
女子は手を組んだまま、少し安堵した表情を浮かべた。
「……少しだけ、距離を考えてみます」
「そう。それだけで、ずっと楽になるかもしれねぇ」
夕暮れの光が、相談室の机に淡く差し込む。
小さな沈黙が、少しだけ心地よく感じられた。