テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
放課後。
教室には夕日が差し込んでいた。
相談者は机にスマホを置いたまま、画面を見つめている。
「俺、自分の話すると後悔するんです」
遥は椅子にもたれた。
「どういうこと」
「話してる時は普通なんです。でも、家帰ってから急に思い出して、『何であんなこと言ったんだろう』ってなる」
少し笑う。
「誰も気にしてないかもしれないのに、一人でずっと考えてる」
教室が静まる。
「昨日も」
相談者は続ける。
「友達に部活の話しただけなんです。別に変なこと言ってないと思う。でも帰ってから、『自慢みたいに聞こえたかな』『話しすぎたかな』『空気読めてなかったかな』って」
視線が落ちる。
「結局、全部恥ずかしくなる」
沈黙。
遥は相談者を見る。
「その場では笑ってたか」
「はい」
「相手は」
「普通でした」
「怒ってたか」
「全然」
遥は少し考える。
「じゃあ」
一拍。
「恥ずかしくなったのは後からか」
「そうです」
相談者は頷く。
「毎回です。だから最近」
少し間。
「自分の話しない方が楽かなって」
教室が静まる。
「聞き役なら失敗しないし、余計なこと言わなくて済むし。その方が安心なんです」
遥は窓の外を見る。
「安心はする」
短く。
「でも」
少し間。
「満足はしてない」
相談者は止まる。
「……してないです。本当は話したいです。笑ったり、くだらない話したり、そういうこともしたい」
小さく笑う。
「でも、後悔するくらいなら黙ってた方がいいって思っちゃう」
教室が静まる。
遥は机に指を置く。
「思い出してるのは」
一拍。
「相手の反応じゃないな」
相談者は顔を上げる。
「え」
「自分の言葉ばかり見てる」
沈黙。
「『あれ言わなきゃよかった』『あんな言い方だった』『話しすぎた』」
少し間。
「全部、自分の記憶だ」
相談者は黙る。
遥は続ける。
「相手は」
一拍。
#一次創作
ruruha
360
ruruha
440
ruruha
316
☘️
34
「もう次のこと考えてるかもしれない」
教室が静まる。
相談者は苦笑した。
「そうなんですよね。頭では分かるんです。でも」
視線が落ちる。
「止まらない」
遥は頷く。
「癖なんだろうな」
短く。
「会話を終わってから採点する」
相談者は思わず笑う。
「採点。毎回やってます。しかも」
少し間。
「赤点しかつけない」
教室が静かになる。
遥は小さく息をつく。
「減点方式だな」
相談者は何も言えなかった。
図星だった。
遥は続ける。
「一回」
少し間。
「相手の言葉も思い出してみろ。笑ってたか、楽しそうだったか、普通だったか。そこまで含めて会話だ」
相談者はゆっくり頷く。
「俺」
少し笑う。
「自分しか見えてなかったのかも」
遥は鞄を肩にかける。
「話すたびに後悔してたら」
一拍。
「誰とも話せなくなる」
夕日がゆっくり教室から消えていく。
会話を思い返して、一人反省会を始めてしまう人は少なくない。
でも、思い出しているのは、実際に起きた出来事ではなく、自分が頭の中で何度も作り直した会話なのかもしれない。
コメント
1件
読了しました。この話、すごく沁みました……。会話の後で一人反省会、私もよくやるんです。「減点方式」って表現、まさにその通りで思わず苦笑い。誰かと話すたびに“自分の言葉だけ”を思い出して後悔するループ、共感しすぎて胸がぎゅっとなりました。遥さんの「相手の言葉も思い出せ」って言葉、優しくて、でもちゃんと核心をついてて。自分の話、もう少し許せるようになりたいなって思わせてくれる、静かで温かい回でした🌙🤍