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白山小梅
大迫との楽しいひと時を過ごした七星は、帰り道、バイクを走らせながらひとり物思いにふけっていた。
先ほど大迫が言った言葉が、何度も頭の中をよぎる。
(尾崎先生が、私のことを……好き……?)
そんなはずない、と七星は首を振った。
(そんなわけない。先生は都会から来た名医で、将来有望な人なんだもの……)
自分の勘違いだと無理やり結論づけ、七星は考えるのをやめた。
一方その頃、医局にいた優人は、野中に声をかけられた。
「七星ちゃんのこと……大迫さんにもバレバレだったみたいだな」
「参りました……。まさか入院して数日の患者さんに指摘されるなんて……」
「ははっ。大迫さん、ただの金持ちのボンボンかと思ってたけど、意外と鋭いな。もしかしたら、チャラい雰囲気を装ってるだけで、実はデキるタイプなのかもしれないね」
「僕もそう思います」
優人は頷きながら、今後七星にどんな顔で会えばいいのか悩んでいた。
そして、先日野坂に言われた言葉が脳裏をよぎる。
“奥様に似てるから親しくしてるんだって、他人から聞かされたらショックでしょう? だから先生の口から言わないと。似てるから近づいたわけじゃないって、ちゃんと説明してあげなきゃ”
(亡くなった妻に似ているから好意を寄せている……そう誤解されたら困るな……)
今日、優人はようやく自分の本当の気持ちに気づいた。
看護師に焚きつけられた大迫が、七星に無理やり手を出しているかもしれない――
そう思った瞬間、いてもたってもいられず、無我夢中で特別室へ走っていた。
中で何が起きているのか想像するだけで胸が締めつけられ、動悸が止まらなかった。
実際には何も起きていなかったが、それが分かるまで、生きた心地がしなかった。
その恐怖は、自分の気持ちを知るには十分すぎるほどだった。
(美奈子が亡くなってまだ三年……三年しか経っていないのに……俺はなんて薄情なんだ)
七星への想いが本物だと気づいた途端、優人は自分を責めずにはいられなかった。
美奈子への愛情は確かに本物だった。
なのに、こんなにも早く心を揺さぶられる女性が現れるなんて――。
亡き妻を裏切るようで、七星への気持ちを素直に喜ぶことができなかった。
大迫が退院すると、平子由希をはじめ後輩看護師二人に厳しい処分が下された。
大迫本人と新人看護師・川奈の証言が揃っていたため、三人はどう取り繕っても言い逃れはできない。
彼女たちは“退職”か“系列の人工透析専門病院、または老人福祉施設への転属”のどちらかを選ぶよう言い渡された。
プライドの高い由希は退職を選び、残りの二人は系列病院への異動を望んだ。
湊総合病院での最後の勤務日。
由希は腹いせに、どうしても七星に言っておきたいことがあった。
廊下ですれ違った際、由希は七星に声をかける。
「遠坂さん。私、今日で最後なの。だからご挨拶に、ちょっといい?」
由希からの挨拶など、これまで一度もない。
どうせ嫌味を言われるのだろうと、七星は腹をくくった。
「何ですか?」
「ふふん、ずいぶん冷たいじゃない。あなた、私のこと苦手だったから、明日からいなくなって嬉しいんじゃないの?」
「別に……」
七星は興味のないふりで返す。
「まあいいわ。でもね、最後だから“置き土産”をあげる」
「?」
由希は七星を冷ややかに見つめ、口を開いた。
「尾崎先生があなたと親しくしている理由……何だと思う?」
「…………」
「ふふっ、分からないようね」
「何でですか?」
七星が尋ねると、由希はにやりと笑った。
「あなたの顔ね……尾崎先生の亡くなった奥様と瓜二つなんですって!」
「えっ?」
「尾崎先生は、あなたが奥さんに似てるから、興味を持ったってこと」
「…………」
「やだわ、ぼーっとしちゃって。まだ分からない? つまり、彼はあなた自身に好意があったわけじゃなくて、奥さんに似たあなたを見て、亡き奥様を思い出してただけなのよ」
由希は楽し気にそう言い捨てると、笑いながらその場を去っていった。
ひとり残された七星は、頭が真っ白のまま、その場に呆然と立ち尽くしていた。
その頃、優人は悶々と悩み続けていた。
どうしても今日中に七星に会って、野坂に言われた通り真実を伝えなければ――
そんな思いにとらわれ、胸騒ぎが止まらなかった。
白衣のままの通用口へ向かい、七星のバイクを確認する。
そろそろ出てくるだろうと、バイクのそばで待つことにした。
五分ほどして七星が通用口から姿を現した。
七星は自分のバイクのそばに立つ優人を見て一瞬驚いたが、何事もなかったかのように歩み寄り、ヘルメットをかぶってバイクにまたがった。
無視されていると気づいた優人は、慌てて声をかける。
「ちょっと話したいことがあるんだ……」
だがその声は、七星がペダルを踏み込んだ瞬間、エンジン音にかき消された。
轟音の中、優人はもう一度叫んだが、その努力もむなしく、七星は表情ひとつ変えずに走り去ってしまった。
何も伝えられなかった優人は、愕然としたままその場に立ち尽くした。
コメント
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悪意がバレて成敗されたのに、まだまだ懲りないヒラコ…😓 まぁ、貴女は永遠に玉の輿には乗れないでしょう…😁 優人先生、頑張って!✊ 自分の気持ちを正直に七星ちゃんに伝えてあげて!! 大迫さんのお話にも、ヒラコの嘘にも動揺していたから、彼女もきっときっと…🍀✨️
嫌なやつ由希‼️最後まで七星ちゃんに嫌味を言って去っていくなんて💢💢💢 優人先生 七星ちゃんを早く追いかけてきちんと話さないと‼️ 誠意を尽くして話せばきっと解決すると思うよ 早く動こう‼️
置き土産が最悪😭やっぱりこうなったかーーー💦女豹最低😑 わーん(;-;) 七星ちゃんこんなの聞いたら動揺するよね💦 優人先生!ちゃんと話して気持ち伝えてー!!七星ちゃんと話せますように…(>人<;)