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柴田
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#恋愛
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花月夜れん
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#ネームレス
「——誰?」
ついにこの時が来たのかと瞼を閉じ、柊也はユランに喰い殺される覚悟すらしていた。 それなのに、いざ蓋を開けてみたら予想とあまりに違う。
ペロリと頰を舐められていた事に驚いて瞼を開けた瞬間、見知らぬ全裸の男と目が合い、柊也は硬直してしまった。
(……おかしい)
さっきまではそこに巨大なドラゴンの腹や足、凶器になりかねない尻尾があったはずだ。なのに今は、長い長い白銀の髪をサラリと揺らした美青年が座っている。……しかも裸で。
横長のキリッとした眼差しに、綺麗に通った鼻筋、陶器にも似た白い肌、筋肉質で引き締まった体をしていようが、裸は裸だ。視界の隅にある肝心な部分は丁度よく長い髪のおかげで隠れてはいるが、誰とも知らぬ男性が全裸で座っているとなると、柊也の顔から一気に汗が噴き出した。
(真っ裸だ!あ、でも綺麗な人……いや、カッコイイ?——だけど、誰⁈)
冷静に考えれば流れ的に答えは明白なのに、柊也は軽くパニックになり、顔からは血の気が引き、少し体が震え始めた。今の今までギリギリの所でかろうじて心のバランスを取っていたせいで、どうにも事態に対応しきれていない。
そんな柊也を、彼は全てを見透かす様な眼差しで見詰めている。
二人の上には柊也のかぶっている半透明な白いベールがあり、ちょっとした狭いスペースに二人で籠っているみたいな状態だ。
「トウヤ様、落ち着いて。私ですよ。ユランです」
耳元にそっと顔を寄せ、ユランが呟いた。耳に心地いい低音が響き、かかる吐息で背筋が跳ねる。相手がルナールでは無いのに体が反応してしまい、柊也は罪悪感を抱いた。
握る拳に力が入り、手袋の中は冷や汗で気持ちが悪い。
「トウヤ様の黒い瞳は……まるで黒曜石ですね。その黒い髪も想像よりずっと艶やかですし、肌もとても綺麗だ……。早く直に触れたいと、切望し過ぎて私の心は今にも壊れそうだったのですよ?」
白いチョーカーの巻かれた首をスッと指先で撫でられ、柊也の体がまたゾクッと体が震えてしまう。
「夢の中で、何度も何度も何度も……その身に触れて、果てる事の出来ぬ身を恨み、自身を妬み、何度苦しんだ事か……」
「……え?」
ユランの言葉が引っかかり、柊也は彼の顔をちゃんと見ようとしたが、とんっと体を軽く押され、体がベッドのシーツへと倒れていった。
その上からユランが覆い被さり、長い銀髪が天蓋の様に二人を包む。
「もう二度と離しませんよ、トウヤ様」
うっとりとした顔を向けられ、柊也の頰がカッと熱くなる。
「貴方は私の、私だけの花嫁だ。元の世界へなど絶対に帰さない」
ユランが自身の体を片手で体を支え、右手の指先で白いウェディングドレスのラインをなぞっていく。
その指先の愛撫で益々熱くなっていく体が許せず、柊也が身を捩って逃げようとし、ベールの中には彼だけとなった。すると、二人を覆っていた銀の髪の一房一房が柊也の腕に巻きつき、磔刑の様に彼の体をベッドに張り付けてしまった。
「私の好きな様に、渇望してやまない望みを叶えてくれるのでしょう?そう言って、私を誘って下さったではないですか、トウヤ様。それなのに……その身は何処へ行こうというのですか?」
そう言ったユランの声に怒気は無く、純粋に少し寂しそうな色をしている。
「愛しています、トウヤ様。初めてその目を、激しい動揺と怒りを見た時から、もう……」
ベール越しに唇が軽く重なり、ユランの言葉が途中で消えた。 唇に感じる体温と耳に響く言葉とで、柊也の瞳がとろりと溶ける。
二人の唇がゆっくり離れた時、柊也は無意識のうちに「ルナール……」と、愛しい人の名を呟いていた。
「はい、トウヤ様」
柊也は否応無しに溶け始めてしまった意識の中で聞き慣れた言葉が聞こえ、一瞬にして彼は正気に戻った。
「……ルナール?」
「はい。何ですか?トウヤ様」
「ル、ルナールゥ⁈」
驚き過ぎて、何度も名前を連呼してしまう。
「ルナールなの⁈」
「……いつ気が付くかなーと、ずっとそわそわしていたのですが……『今』でしたか」
ユランの細く美しい眼差しが、スッと遠い目をした。
「何で?どうして!ルナールは、僕を守って消えた——……」
ルナールが庇ってくれた時、彼の体は花びらが散る様に消えていった事を思い出し、柊也が顔をしかめた。
「あの姿は、私の傀儡の様な者です」
「……『傀儡』?それって確か、『人形』みたいな?」
「はい。此処に閉じ込められ、鬱屈した気分を癒す為に造った『代わり身』です。それがまさか、森で【純なる子】を拾い、一緒に旅をする事になるなど、正直私も想定外でした」
そう言って、ユランはちょっと困ったような笑みを浮かべた。彼にとって、本当に全く考えてもいなかった事態だった様だ。
「じゃあ君は、ずっと僕に嘘を……ついていたの?」
「……狐は太古から嘘をつくものですよ、トウヤ様」
ルナールの体が散った後に木の葉が一枚だけ残されていた事を思い出し、柊也の頭の中に、木の葉を頭に乗せて変身する狐の姿が浮かんだ。
「そ、それならそうと、最初から『自分がユラン王子だ』って、『【孕み子】は自分だ』って言ってくれたらよかったのに」
「すみません……。どうしても貴方と旅をしてみたかったのです。閉じこもってばかりの日々だったので、早々に打ち明けてしまうと、出来るだけ早い段階で解呪をという話になるのでは?とも心配だったので。それと……最初に本心ダダ漏れな発言をしてしまったので、余計に色々と後へと引けなくなってしまって」
ユランの言葉を聞き、柊也は随分前に彼から『「閉じ込められた場所から助けてくれた相手」なんて、一目惚れの王道です。「好きだ、結婚しよう。もう君を帰さない。閉じ込めておけ」くらい当然のように言い出しますよ?王子の様な権力の権化にそんなセリフ、言われたいですか?』と、言われた事をまた思い出した。
「……アレは、君の本心だった訳だ」
「はい。ああ言って脅しておけば、すぐには『幽閉塔』を目指す事は無いだろう、という気持ちもあったので、あの様な言い方になりました」
「ただ旅がしたかっただけで、僕に嘘をつき続けたの?」
「いいえ。トウヤ様が積極的に私の元へ来る事を選ばれても、あの時点では抑え込む事も到底無理でしたから。そうなるともう、『解呪』などそっちのけで貴方を此処に閉じ込め、ただ欲望のままに交尾だけに明け暮れる日々を強制しかねない自分も嫌だったので、つい」
「……い、いやらしいのですね。王子様なのに」
「したい盛りの青年が、たった一人でこんな場所に居るのですよ?正直、欲求不満にもなりますし、性癖だって歪むってものです」
そう言って、ユランが柊也の額に額を重ねた。
「こうやって話している時間すらも、本当は不要だと思っているのですよ?」
グリッと脚にナニかが擦り付けられ、柊也が口元を震わせた。
「花びらと木の葉で造った傀儡の中に居る間はずっと、私自身は夢の中に居る様な感覚だったのです。とても淫靡な夢を見た後は、反動でこの身が狂うかと思いました」
息が荒れ、ユランが距離を詰める。
「もういいでしょう?トウヤ様……私は、貴方が欲しい」
そう言って、ユランは柊也の顔にかかる白いベールを、自身の長い髪の毛を器用に動かしてそっとよけた。視界を邪魔していたシフォンで作られたベールが無くなり、二人を間を遮る物が何も無くなったと当時に、二人は必然かの如く惹かれ合う様に唇を重ねた。軽い口付けから始まり、次第に舌が絡み合っていく。
「んっ……ふっ、く……」
吐息が溢れ、角度を変えて互いを求める。 互いの頰が桜色に染まり、体温が上がっていく。柊也はユランの首や背に腕を回して抱き締めたい衝動に駆られたが、彼はそれを許してはくれなかった。腕は相変わらずユランの髪で押さえつけられ、磔刑の様なポーズのままだ。
自由がきかない分、柊也は余計にユランが欲しくなり、唇が離れていきそうになるたびに舌を伸ばして、引き止めた。ユランの唇を、歯を、口腔とを舌で犯し、柊也が無自覚のまま彼の理性を完全に壊していく。
「トウ……ヤ、……んあっ」
吐息を絡ませたまま、ユランの手が柊也の着るウェディングドレスの胸元を強く掴み、下へとおろす。胸元を露わにさせると、膨らみのない胸を撫でながら、キスをしていた唇を離し、首筋を舐め始めた。
「ルナ、……あぁっ!」
八重歯のある歯で噛まれ、柊也の首に噛み跡がつく。少し滴った血が白いチョーカーに染み込み、赤い花が咲いた様に綺麗だった。
「トウヤさ、ま。ユラン、と、本名で呼んでもらってもいいですか?」
「そっか……ごめんね。ユ、ユラン……」
「トウヤ様……」
互いの名前を呼び合い、二人はちょっとくすぐったい気持ちになった。
でも、初心な感情はすぐに淫楽な熱に掻き消され、ユランが柊也の肌へ強い執着の跡のつけ始めた。ルナールの時につけた愛の証を、上書きでもするかの様に口をつけ、強く吸い付く。
柊也の体は、心は——全てが全て、私だけのモノだ。
たとえ跡をつけた者が『自分』であっても、『この体』がつけたモノでなければ認めない。そんな強い想いが見て取れる。
きつく肌を吸われるたびに柊也は体にちくりとした痛みを感じたが、それが彼の愛情の証の様に感じられ、痛みすらも心地良かった。好き、好き——と、何度も体に刻み込まれるみたいな感覚は優越感を伴う。
「ル……ユ、ユラン……僕も、好き……」
本名は言い慣れず、間違えながらも、柊也は必死に何度も『ユラン』の名前を口にした。
好き、愛してるという証である花びらが彼の体中に増えていく。でも、過敏な箇所はずっと避けられ続け、柊也は痺れを切らし始めてしまった。
「ユラン……む、胸も……吸って?」
肌を深く重ねる事により得られる快楽を、骨の髄まで知っている柊也は我慢出来ず、自分から懇願した。その瞳はもう悦楽に染まっていて、照れや恥ずかしさは鳴りを潜めてしまっている。
「あぁ……いいのですか?ご褒美を貰っても」
そう言うなりユランは柊也の胸に縋り付き、細く長い指先で尖りを双方とも摘みながら、チロチロと舌先で舐め始めた。とろりと溶けた顔をしながら、長身の男が胸を貪る姿を見て、柊也の背筋がぞくりと震える。下着の中でとろりと蜜や先走りが垂れ出し脚にまで伝った。
「ユランは、胸が……好きだよね」
「トウヤ様の、だからですよ?こんなにぷっくりと膨らんで、私の為だけに美味しそうに熟した、果実の様です」
獲物を前にした獣の様に口を大きく開けて、ユランが柊也の胸へと噛み付く。肌に軽い痛みをまた感じたが、もう快楽の方が遥かに上で、柊也ははしたない声をあげてしまった。
「噛まれるの、お好きですよね。痛いのが好きだなんて、いやらしいお人だ」
「『ルナール』が、そうしたんだよ?」
「……なんか悔しいです」
自分で最初にそう名乗ったクセに、自分では無い名前を呼ばれ、ユランはちょっとムッとした顔になった。
ユランは拗ねたまま体を起こすと、柊也の着る白いドレスの裾を軽く持ち上げ、興奮で硬さをもってしまった屹立のせいで膨らむ下着を露わにさせた。細い脚には蜜が滴り、しっとりと肌が濡れていてかなり卑猥だ。
「ユラン、このドレス脱ぎたいんだけど……」
ボリュームのあるスカートは邪魔だし、女装状態である事実も気に入らず、柊也がそうお願いしたのだが、ユランは即座に断った。
「このパニエは邪魔なので許可しますが、ウェディングドレスは脱がせませんよ」
「……え 」
(まさか、『ルナール』の時よりも、『ユラン』ってちょっと変態さんなんだろうか)
そう言えばさっき性癖がどうこう言っていた様な……と、柊也が頭の中でブツブツ考えている隙に、ユランはさっさと邪魔物でしかなかったパニエを脱がせ、スカートの膨らみだけを排除した。柊也の脚に跨り、下着の中で窮屈そうにしている屹立に、自身のモノを擦り付け始める。
「んあ!」
「気持ちいいですか?ふふっ」
淫猥な笑みを浮かべながら問われても、『うん』と答える余裕すら柊也には無い。下着越しだというのがもどかしく、直に触って、擦って欲しいとは思うが、ソレを言う余裕も無く柊也は喘いだ。
「可愛い……可愛いですよ、トウヤ様」
ユランの切っ先から垂れ出す先走りでグチュグチュと水音がたち、余計にいやらしい気持ちが加速していく。でも、もっとちゃんとユランが欲しい……。焦らされて、どうしてもそう考えてしまう。
「ユゥ、ユラァ……んんっ。も、もう、おねがぃ、脱がせて?ちゃんと、さわっ……てぇ?」
気持ちよ過ぎて、でも刺激が足りなくって、柊也がポロポロと涙を流して懇願しだした。
その顔を見て、ユランが肩を震わせた。
「仕方ないですね、トウヤ様ったら……」
口元に弧を描き、嬉しそうにユランが微笑む。
「いいですよ、トウヤ様。でもね、今日はちょっと違う事をしましょうか」
その言葉を聞いても、トウヤはぼぉっとした目でユランの次の行動を待つ事しか出来なかった。
コメント
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うわぁ、ついにユランが全裸で現れたシーン、めっちゃ衝撃でした…!柊也がパニックになる気持ち、すごくわかる(笑)でも「狐は太古から嘘をつく」って台詞、ゾクッとしました。ルナールが傀儡だった伏線、完全に持ってかれた…。あと、名前を呼び合う二人の甘さと、それに続く重たい欲望の温度差がたまらないです。次回、どうなるんだろう…緊張しながら待ってます🌙