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昼休みの終わり。チャイムまであと数分、廊下には部活勧誘のビラを持った生徒たちが行き交っていた。大地はその真ん中で、突然立ち止まると手をひらりと掲げた。
「――さあさあ皆さん! 今日の特別公演は、大地による即興ショー!」
周囲が一瞬ざわつく。
「おいおい、また始まったよ」
隼人は思わず頭を抱えた。
だが、もう大地は止まらない。
「今日のテーマは……友情のハーモニー!」
大地は後ろから隼人の腕をつかみ、無理やり自分の横へ。
「えっ、俺!? 待てって!」
「主役は君だ、隼人くん!」
人だかりがみるみる増える。
吹奏楽部が偶然通りかかり、トランペットを一吹き――。
その音を合図に、大地が突然ターンを決めた。
「おぉー!」
「いけいけ大地!」
拍手と歓声が廊下を揺らす。
隼人も引っ張られるように一歩踏み出した。
(なんで俺まで……でも、こいつ一人にさせるのもな)
覚悟を決めた隼人は、隣に並んで小さくステップを踏んだ。
「それっ」
大地が合わせるようにくるりと回る。
「おおー!」
さらに歓声。
大地がにやっと笑ったその時――。
ドンッ。
勢い余って二人は同時に廊下の壁へ。
隼人がとっさに大地を支える。
狭い距離、顔がすぐ目の前。
「……大丈夫か」
「う、うん。ナイスキャッチ、隼人!」
「ったく、もう少し気をつけろよ」
廊下はすっかりライブ会場。
誰かがスマホを掲げ、写真をパシャリ。
その瞬間、再びチャイムが鳴った。
「お騒がせしましたー!」
大地が大きく手を振ると、人垣が笑いながら解散していく。
隼人はため息をつきつつも、口元にかすかな笑み。
「……ホント、退屈させないな」
「え?褒めた?」
「褒めてねぇ!」
その言葉にまた笑いが広がり、
昼休みはまるで文化祭のように終わったのだった。