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#異能
Mさんは御年90歳のとある神社の宮司。
失礼ながらそんなご高齢とは思えないほど、頑丈そうな体格とはきはきとした物言いをされる人。そんなMさんが表情を曇らせながら語ってくれたのは先日何者かに破壊された祠についてだ。
「ええ、それはもう驚きましたよ。うちの神社は昔から地元の方々に親しまれてきましたからね。それがまさかあんな……。絶対に許されないことだと思います」
通常、一つの神社では複数の神格が祀られている。
Mさんの務める神社でも例外ではなく、入り口が壊されていたのは主祭神ではない神様の祠だったそうだ。
「もちろんだから良いって話ではないです。ここでお預かりする神様はみんなお護ろするべき大切な方々ですから」
警察が調べたところ、賊は深夜トラックで境内に侵入。プロの仕事で祠の鍵を破壊し、中のご神体を奪って素早く立ち去ったようだ。
「ええ。ご神体は大きな天狗様のお面です。天魔波旬様。……その昔、織田信長公が生まれ変わりを自称された第六天魔王の別名です」
神社に伝わる古文書によればその神様は所謂生贄に子供の命を求める恐ろしい存在だったとMさんは教えてくれた。
「あくまでも大昔の話です。とうぜんだけれども。……平安時代の頃は既に人形を代用する習慣となっていたようです。これを<こそなえの儀>と呼んでいます」
その儀式は犠牲となった子供たちの魂を慰め、天狗の面に宿る荒ぶる神様を封じ込めるためのものだそうだ。それが執り行えなくなったということは大変ゆいしき事であり、遺憾なことだとMさんは表情を険しくする。
「都会に住む方々にとってこんな片田舎の出来事は知るに値しない事なのかもしれません。だけど、知ろうとしなかったと言っても過去に行われた凄惨な出来事はなかったことにはならないのです」
そしてこれから起きる悪いことも。
そう悲しげにつけ加えてМさんは目を伏せるのだった。
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