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放課後、部活帰り。隼人は大地の横を歩きながら、どこかそわそわしている。
「なあ大地」
「ん?」
「お前さ、最近クラスの女子とよく話してるよな」
「え、そうか?」
「この前も、図書室でさ……」
大地は歩みを止める。
「……もしかして隼人、おれに嫉妬してる?」
「ち、ちがっ……!」
声が裏返った。
「別にそんなわけじゃない。お前がモテてるからって、べつに……!」
大地は肩を揺らして笑った。
「かわいいな」
隼人は耳まで真っ赤になり、思わず早足になる。
「かわいいって言うな! てか、俺はただ……」
言いかけて飲み込む。
そのあとも隼人はやたらと張り合い、
「アイス奢ってやる」と言いながらも大地の好みを外しまくったり、
わざわざ重い買い物袋を奪って持とうとして落としかけたり――。
空回るほどに、大地はますます穏やかに笑っていた。
昼休み。
大地は他クラスの友達に呼ばれて、教室を出ていった。
残された隼人は、机に突っ伏している。
(べ、別に……気になんかしてないし)
頭の中でそう唱えながらも、視線はつい廊下の方へ。
――そして、クラスメイトの女子がにやにやと耳打ちしてくる。
「隼人、顔、赤いよ?」
「誰が!?」
「だってさっきから大地くん見てたじゃん」
反射的に机をバンと叩いて立ち上がる。
「見てない!」
勢い余って椅子がガタンと倒れた。
教室に小さな笑いが広がる。
その瞬間、ドアが開いた。
「おー、隼人! パン半額になってたから買ってきた!」
大地が片手にメロンパンを持って笑っている。
隼人は思わず声を荒げた。
「な、なんで勝手にいなくなるんだよ!」
大地は首をかしげ、ほんのり頬を膨らませる。
「え? 隼人も欲しかった?ごめん、ごめん」
「ち、違う!……もう、いい」
教室がまた笑いに包まれた。
隼人はメロンパンを半分にちぎって差し出す大地を見れず、むすっとしながらも受け取る。
頬がまだ熱い。
(ほんと、何なんだ俺)