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第5話、読んだよ…。あの一瞬も言えなかった「さっき」が、ずっと胸に残る感じがしたわ。悠生の「逃げてるみたいに見える」って言葉、すごく重いね。蒼真が何から逃げてるのか気になるし、紬の視点でしか見えないもどかしさがじわじわくるエピソードだった。
放課後。
教室には、もうほとんど誰もいない。
黒板だけが少し白く残っている。
消し忘れた文字の跡。
紬は窓際の席に座っていた。
帰るタイミングを失ったまま、ただ鞄を抱えている。
(今日も)
特に何もなかった一日。
そう思うのに。
胸の奥だけが落ち着かない。
廊下から足音がした。
蒼真だった。
一人。
教室の前を通るだけ。
そのはずだった。
一瞬。
視線が合う。
蒼真の目は止まらない。
そのまま通り過ぎる。
紬は動けない。
(今、見てた)
そう思った瞬間にはもう遅い。
蒼真の背中は遠ざかる。
何もなかったみたいに。
紬は立ち上がる。
無意識だった。
教室を出る。
廊下。
蒼真の姿はもう見えない。
でも足は止まらない。
角を曲がる。
そこにいた。
蒼真。
壁にもたれて、スマホを見ている。
気づいていないふりにも見える。
紬は息を吸う。
「……蒼真」
名前が出る。
蒼真はすぐには顔を上げない。
数秒。
それから、ようやく視線だけ向ける。
「なに」
低い声。
紬は少し詰まる。
何も考えていなかった。
ただ呼んだだけだった。
「さっき」
言いかけて止まる。
蒼真の眉がわずかに動く。
「さっき?」
繰り返される。
紬は口を開く。
閉じる。
「……別に」
結局それになる。
蒼真は小さく息を吐く。
「用ないなら呼ぶな」
それだけ。
冷たいというより、興味がない。
その方がきつい。
紬は視線を落とす。
「……ごめん」
小さく言う。
蒼真はもう返さない。
スマホに視線を戻す。
終わった、という空気。
紬はその場に立ったまま。
動けない。
「紬」
後ろから声。
振り向く。
悠生だった。
「探してた」
息は少しだけ上がっている。
「……なんで」
「帰るかと思って」
紬は何も言わない。
悠生は廊下の奥を見る。
蒼真はもういない。
「話してた?」
「別に」
即答。
悠生は少しだけ目を細める。
「そ」
それだけ。
少し沈黙。
「なあ」
悠生が言う。
「さっきのさ」
紬は顔を上げない。
「蒼真、別に怒ってないよ」
紬の指が少し動く。
「怒ってないから余計タチ悪いんだよな、ああいうの」
軽く笑う。
でも紬は笑えない。
帰り道。
二人並んで歩く。
会話は少ない。
夕方の空が少しだけ赤い。
「今日さ」
悠生が言う。
「蒼真、ちょっと変だった」
紬は反応しない。
「前からだけど」
付け足す。
紬は足元を見る。
「どこが」
「……分かんない」
正直な声。
「でも」
少し間。
「見てると、逃げてるみたいに見える」
紬の足が止まりかける。
(逃げてる)
その言葉が引っかかる。
蒼真が?
何から?
「……考えすぎ」
そう言うしかない。
悠生はそれ以上言わない。
ただ、少しだけ空を見上げる。
「そうかもな」
その夜。
紬はまたアルバムを開く。
昔の蒼真。
何度見ても変わらない笑顔。
でも今日は少し違って見えた。
(逃げてる)
その言葉が重なる。
紬はページをめくる手を止める。
写真の中の蒼真は。
まだ何も知らない顔をしていた。
かーすけ
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みう
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