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#命
ruruha
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#学園
要 九十九
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星キラリ

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眠狂四郎
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土曜日の朝。
美咲は、鏡の前で何度も髪を整えていた。
普段、学校へ行くときは制服に合わせて適当にまとめるだけだ。けれど今日は、いつもより少しだけ時間をかけている。
服も、昨日の夜から迷っていた。
結局、淡い色のブラウスにスカートを合わせた。気合いを入れすぎたように見えないか、鏡の前で確認する。
「……別に、普通やんな」
誰に言い訳しているのか、自分でも分からない。
鞄を持って玄関へ向かうと、母親が台所から顔を出した。
「今日は出かけるんやったね」
「うん。遊園地」
「楽しんできぃな」
「分かってる」
靴を履きながら、美咲は携帯を確認した。
待ち合わせの時間までは、まだ余裕がある。
それでも、早く家を出た。
駅に着くと、改札の近くに直人の姿があった。
学校で見る制服姿とは違う。落ち着いた色のシャツに、細身のパンツ。髪もいつもより整っている。
美咲は少し離れたところから、その姿を眺めた。
先に気づいたのは直人だった。
「おはよう」
「おはよ、先輩」
「早かったな」
「先輩もやん」
「俺は今来たとこ」
「ほんま?」
「ほんまやって」
美咲は直人の服装を上から下まで眺めた。
「なんか、学校と全然違うな」
「美咲もやろ」
「そう?」
「うん。似合ってる」
不意に言われて、美咲は視線を逸らした。
「……急に言わんといて」
「思ったこと言うただけやけど」
「そういうとこやで、先輩」
「どういうとこ?」
「知らん」
直人は小さく笑った。
改札を抜け、二人は電車に乗った。
遊園地に着くまでの間、美咲は今日乗りたいアトラクションを次々と挙げていく。
「ジェットコースターは絶対やろ。それから急流すべり。あと、あの回転するやつも乗りたい」
「最初から飛ばすなあ」
「時間もったいないやん」
「全部乗れるか分からんで」
「先輩、体力ないん?」
「誰がや」
「じゃあ大丈夫やな」
「勝手に決めんな」
そんなやり取りをしているうちに、遊園地の最寄り駅に到着した。
入口のゲートをくぐると、遠くからジェットコースターの走行音が聞こえてくる。
美咲の目が輝いた。
「先輩、あれ!」
「見えてる」
「行こ!」
「まだチケットしまってへん」
「あとでええやん!」
「なくしたら困るやろ」
直人がチケットを鞄にしまうのを待って、美咲はすぐに歩き出した。
最初に選んだのは、一番大きなジェットコースターだった。
乗り場へ続く列に並んでいる間も、美咲は落ち着かない。
「先輩、絶叫系いける?」
「普通には」
「普通って何?」
「乗れるってこと」
「叫ぶ?」
「さあな」
「絶対叫ぶやろ」
「美咲は?」
「叫ばへん」
「さっきから楽しそうにしてるけど」
「それとこれとは別!」
やがて順番が来た。
二人で隣同士の席に座り、安全バーを下ろす。
ゆっくりと車体が上昇していく。
カタカタと音を立てながら、コースターは高い場所へ向かっていった。
美咲は前を見つめている。
「うわ、思ったより高い!」
「さっき叫ばへん言うてたやん」
「まだ始まってへん!」
頂上に差しかかった瞬間、車体が急降下した。
「きゃああああ!」
美咲の声が風に飛ばされる。
隣では直人も声を上げていた。
急旋回、急降下、身体が浮くような感覚。
ようやく停止したとき、美咲は息を切らしながら笑っていた。
「めっちゃおもろかった!」
「……思ったより激しかったな」
「先輩、叫んでたやん!」
「美咲もやろ」
「私はええねん!」
「何がええねん」
「もう一回乗ろ!」
「今降りたばっかりやで」
「もう一回!」
結局、二人はもう一度列に並んだ。
二回目は、最初よりも余裕があった。
美咲は途中で直人の方を見ようとしたが、急旋回に身体を持っていかれて断念した。
降りたあと、直人が笑いながら言った。
「途中、こっち見ようとしてへんかった?」
「見ようとした」
「危ないやろ」
「先輩がどんな顔してるか気になって」
「それで?」
「見られへんかった」
「残念やったな」
「次は絶対見る」
「三回目は勘弁して」
「えー!」
昼前になり、二人は射的の店に立ち寄った。
棚には大小さまざまな景品が並んでいる。
美咲は、その中にあった猫のぬいぐるみを見つけた。
「これ、かわいい」
白い身体に、少し不機嫌そうな顔。首には赤いリボンがついている。
「欲しいん?」
「うん。あの顔、なんか好き」
「自分に似てるから?」
「どういう意味や!」
直人は笑いながら、射的の銃を手に取った。
美咲も挑戦したが、弾は景品の横を通り過ぎてしまう。
「今の惜しかった!」
「全然当たってへんかったで」
「ちょっとずれただけやん」
二発目も外れた。
三発目は景品に当たったものの、倒れる気配はない。
「なんで動かへんの!」
「もうちょい下を狙った方がええんちゃう」
「分かってるって」
直人は隣で構えた。
狙いを定め、引き金を引く。
弾が景品の台に当たり、猫のぬいぐるみが少し揺れた。
「おっ!」
美咲が身を乗り出す。
もう一発。
今度は景品が傾き、そのまま台から落ちた。
「やった!」
美咲は思わず両手を上げた。
店員からぬいぐるみを受け取ると、すぐに抱きしめる。
「ありがとう、先輩!」
「どういたしまして」
「名前、ミケにしよ」
「白いのに?」
「ええやん。ミケはミケ!」
「三毛猫ちゃうけどな」
「細かいこと言わんといて」
美咲はミケを鞄に入れようとしたが、少し大きくてうまく収まらない。
結局、片手で抱えたまま歩くことになった。
昼食は、園内のレストランでとった。
窓際の席に座り、美咲はメニューを眺めながら迷っていた。
「ハンバーグもええし、オムライスもええな」
「どっちも頼んだら?」
「食べきられへん」
「じゃあ、俺の少し食べる?」
「先輩、何にするん?」
「カレー」
「それも食べたい」
「一口な」
「分かってるって」
注文を済ませると、テーブルの上にミケを座らせた。
その姿を見て、直人が笑う。
「ずっと連れて歩くん?」
「当たり前やん。今日の戦利品やで」
「戦ったん俺やけど」
「応援したん私やん」
「応援だけで取れるんやったら楽やな」
「先輩、また射的あったら今度も頼むわ」
「自分で挑戦する気はないん?」
「あるけど、先輩の方が上手いやん」
「最初から俺に任せるつもりやったんか」
「結果的にはそうなったな」
「都合ええなあ」
美咲は笑いながら、ミケの頭を撫でた。
料理が運ばれてきて、二人は食べ始めた。
美咲は自分のオムライスを食べながら、直人のカレーも一口もらった。思ったより辛かったのか、水を飲む。
「辛っ!」
「大丈夫か?」
「思ったより辛かった」
「そんなに辛いか?」
「先輩、平気なん?」
「これくらいならな」
「私にはちょっと辛いわ」
直人は笑いながら、自分の皿に視線を戻した。
食事をしながら、話題は自然と花火部のことになった。
「咲希、昨日も部室で先輩の卒業の話してたで」
「何て?」
「卒業したら部室が静かになりそうやって」
「亮介は?」
「亮介は、先輩がおらんようになったら誰に仕事押しつけたらええんやろって」
「相変わらずやな」
「ほんまに。最後まで人使う気満々やった」
「美咲も気をつけや」
「私は押しつけへんし」
「この前、片づけ途中で帰ろうとしてたやろ」
「それは、ちょっと用事があったから!」
「道具置きっぱなしやったで」
「……見てたん?」
「見てた」
美咲は気まずそうにスプーンを動かした。
「先輩、そういうとこだけ覚えてるな」
「そういうとこも、や」
「余計なことまで覚えんでええのに」
直人は笑った。
美咲はオムライスを食べながら、ふと思い出したように顔を上げた。
「そういえば、先輩に教えてもらったこと、最近ちょっと分かってきた気がする」
「何のこと?」
「花火の準備。打ち上げる前の確認とか、火薬の扱いとか。最初は言われた通りにするだけやったけど、最近は何でそうするんか考えるようになった」
「ええことやと思うで」
「先輩、最初から分かってたん?」
「いや。俺も最初は何も分からんかった」
「意外」
「何が意外やねん」
「何でもできる人やと思ってた」
「そんなわけないやろ」
直人は少し考えてから続けた。
「分からんことをそのままにせんかっただけやと思う。聞いたり、失敗したりして覚えたんや」
「私も失敗してるで」
「知ってる」
「そこは否定してや!」
「失敗せん人なんかおらんやろ」
その言葉に、美咲は少しだけ目を細めた。
「先輩って、そういうこと言うの上手いな」
「別に上手く言おうとしてへん」
「分かってる」
食事を終えた二人は、園内を歩きながらいくつかのアトラクションを楽しんだ。
小さなボートに乗り、迷路のような建物を歩き、ゲームコーナーでは景品を狙って何度も失敗した。
美咲は写真を撮るたびにミケを写り込ませようとする。
「先輩、こっち向いて!」
「また写真?」
「今日の記念やん」
「さっきも撮ったやろ」
「何枚あってもええねん」
美咲は携帯を構え、直人の隣に並んだ。
一枚目は、直人が目を閉じてしまった。
二枚目は、美咲が笑いすぎて顔がぶれていた。
三枚目でようやく二人ともきれいに写った。
「やっと撮れた!」
「三枚目で済んだんやから上出来やな」
「先輩、写真のときくらい笑ってや」
「笑ってるやろ」
「もっと!」
「これ以上?」
「うん!」
直人が少し大げさに笑うと、美咲は吹き出した。
「それは変!」
「注文多いな」
「だっておもろいんやもん」
夕方が近づくと、二人は観覧車に乗った。
ゴンドラがゆっくりと上昇していく。
窓の外には、遊園地の景色が広がっていた。
昼間は賑やかだった園内も、少しずつ夕暮れの色に変わっている。
美咲は窓に近づき、遠くを眺めた。
「結構高いな」
「ジェットコースターよりは怖くないやろ」
「それはそうやけど」
「高いとこ苦手なん?」
「苦手ちゃうよ。ただ、こういうのって降りるまで時間かかるやん」
「急いで降りたいん?」
「そういう意味ちゃう!」
直人は隣で笑った。
しばらく景色を眺めていると、美咲の視線が直人に移った。
「先輩、卒業したら、学校で顔を合わせることも今より少なくなるんやな」
「そうやな」
「なんか変な感じ」
「俺もまだ実感ないわ」
「部活で会えるのも、あと少しやし」
美咲は窓の外に視線を戻した。
同じ部室で準備をしたり、作業の合間に話したりする時間も、もうすぐ変わっていく。
今まで当たり前だったことが、少しずつ変わっていく。
それを考えると寂しさはあった。
けれど、今日のように二人で出かける時間までなくなるわけではない。
「先輩、卒業したら何してるんやろ」
「普通に生活してると思うで」
「何それ」
「美咲は?」
「私は部活してる。先輩に教えてもらったこと、まだ全部できるわけちゃうし」
「俺がおらんでも大丈夫やろ」
「それは分からん」
「亮介も咲希もおるやん」
「そうやけど、先輩に聞きたいこともあるし」
直人は美咲を見た。
「聞きたいことがあったら連絡してきたらええやん」
「ほんまに?」
「何で嘘つくねん」
「忙しいかもしれへんやん」
「そのときは、返事できるときにする」
「それならええわ」
美咲は少し笑った。
ゴンドラが頂上に近づく。
夕日が窓から差し込み、直人の横顔を照らしていた。
美咲はその顔を見ていたが、直人が気づくと慌てて外を向いた。
「何?」
「別に」
「さっきから見てたやろ」
「見てへん」
「見てたって」
「先輩の顔に何かついてるんちゃうかと思って」
「何もついてへんで」
「確認しただけ」
「そっか」
直人はそれ以上追及しなかった。
観覧車を降りたあと、二人は園内のベンチに腰を下ろした。
美咲は携帯を取り出し、今日撮った写真を見返す。
「これ見て。先輩、めっちゃ変な顔してる」
「どれ?」
「これ!」
ジェットコースターから降りた直後の写真だった。
髪が乱れ、直人は目を見開いている。
「これは仕方ないやろ」
「保存しとこ」
「消してくれへん?」
「嫌や」
「何でやねん」
「おもろいから」
直人は諦めたように息をついた。
今度は、射的で手に入れたミケを抱いた写真が表示された。
「これ、ええな」
「ミケが主役みたいやけど」
「今日の主役やもん」
「俺らは?」
「背景」
「ひどいな」
美咲は笑いながら、写真を一枚ずつ眺めていった。
ふと、直人が隣に座り直した。
「美咲」
「ん?」
「ちょっとええ?」
「何?」
直人は美咲の顔を見つめた。
いつものようにからかう様子はない。
美咲も、携帯を膝の上に置いた。
「キスしてもええ?」
その言葉に、美咲の頬が一気に熱くなった。
視線を落とし、ミケのリボンを指先で触る。
少し迷ったあと、小さく頷いた。
「……ええよ」
直人はゆっくりと顔を近づけた。
唇が触れる。
ほんの短いキスだった。
離れたあとも、美咲はしばらく顔を上げられなかった。
「……顔、赤いで」
「先輩もやん」
「そうか?」
「そうやで」
直人が笑う。
美咲はその顔を見て、少しだけむっとした。
「何で笑うん」
「嬉しかったから」
その一言で、また顔が熱くなる。
「……もう一回」
美咲が小さく言った。
直人は一瞬だけ目を見開き、それから優しく笑った。
今度は美咲の方から、少しだけ顔を近づけた。
二度目のキスは、さっきよりも長かった。
離れたあと、美咲は直人の肩に額を寄せた。
「先輩」
「ん?」
「今日、楽しかった」
「俺も」
「ジェットコースター、もう一回くらい乗ってもよかったな」
「まだ乗る気やったん?」
「うん」
「元気やなあ」
「先輩が疲れてただけちゃう?」
「誰がや」
美咲は笑った。
しばらく二人はベンチに座ったまま、園内の人の流れを眺めていた。
やがて帰る時間になり、駅へ向かう。
歩きながら、美咲はミケを抱え直した。
「先輩」
「何?」
「これ、部室に持っていったら亮介に何か言われそう」
「絶対言われるな」
「咲希にも笑われると思う」
「ええやん。今日の思い出やし」
「先輩も写ってる写真、見せたろ」
「変な顔のやつはやめてくれ」
「考えとく」
「絶対見せる気やろ」
「さあな」
駅に着くと、電車の時間を確認した。
ホームで並んで立つ。
電車が到着するまで、少しだけ時間があった。
美咲は直人の袖をつまんだ。
「先輩」
「ん?」
「今日はありがとう」
「こちらこそ。楽しかったで」
「また遊びに行こな」
「うん」
電車がホームに入ってくる。
扉が開くと、直人が先に乗り込み、美咲も続いた。
車内はそれほど混んでいなかった。
二人は並んで座り、窓の外を眺めた。
途中の駅で直人が降りる。
立ち上がる前に、美咲の方を向いた。
「ミケ、落とさんようにな」
「分かってるって」
「あと、写真送って」
「変な顔のも?」
「それ以外で頼むわ」
「考えとく」
直人は笑って、電車を降りた。
扉が閉まり、ホームに立つ姿が少しずつ遠ざかっていく。
美咲は窓から手を振った。
直人も気づいて、軽く手を上げる。
電車が動き出すと、美咲は膝の上のミケを見た。
赤いリボンが少し曲がっている。
指で直して、抱き直した。
携帯を開くと、今日撮った写真が並んでいた。
ジェットコースターで叫んだ顔。
射的の景品を抱いた姿。
夕暮れの観覧車。
そして、二人で並んで笑っている写真。
美咲は最後の一枚を選び、しばらく眺めていた。
月曜になれば、またいつもの学校生活が始まる。
先輩はもうすぐ卒業する。
同じ場所で過ごす時間は、今までとは変わっていく。
それでも、今日のような一日を重ねていけたらいい。
美咲は写真を保存し、携帯を鞄にしまった。
ミケを抱く腕に、少しだけ力を込める。
窓の外には、夕暮れの街が流れていた。
コメント
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わああ〜もう第22話、、!!😭💕💕 遊園地デート、尊すぎて息するの忘れたんだけど!? 射的で取ったぬいぐるみに「ミケ」って名付ける美咲ちゃん、かわいすぎて反則やわ〜🎀✨ 観覧車のシーン、夕日と重なって先輩の横顔が綺麗すぎて……そりゃ見ちゃうよね分かる!! キス、しかも美咲ちゃんから「もう一回」って……っ!!! 卒業目前の切なさと、それでも一緒にいたいっていう気持ちが詰まってて、胸がぎゅーってなったよ😭💖 亮介に絶対何か言われそうなミケ、部室に持ってくの楽しみすぎる(笑) 次話も楽しみにしてるね、ruruhaさん!🌸