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#大人の恋愛
Jasmine
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「じゃあ、百花ちゃん、403号室お願いね」
「了解でーす!」
百花は元気よく返事をし、きょろきょろと周囲を見回した。
「あれ? 七星の奴、さぼってるな……もうっ!」
小さく文句をこぼしながら、百花は一足先に403号室へ向かった。
仕方なくひとりで作業を始めたが、待てど暮らせど七星は姿を見せない。
「七星ったら、本当にさぼる気なの?」
さすがに腹が立ってきた百花は、作業を中断し、ロッカールームへ続く階段へ向かった。
廊下を曲がり、階段へ続く出口に足を踏み入れた瞬間、七星が倒れているのが目に飛び込んできた。
「な、七星っ! どうしたのっ? 大丈夫? 七星!」
ようやく気づいてもらえた七星は、もうろうとした意識の中で、うわごとのように呟いた。
「たす……けて……せんせい……」
弱々しい声を聞いた百花は、顔面がみるみる青ざめた。
「だっ、誰かっ! 誰かいませんか? 誰か来てっ! 早く!」
ちょうどそのとき、通りかかった看護師長の小山内が声に気づき、駆け寄ってきた。
「どうしたの? 遠坂さんっ、しっかりして!」
「ここに倒れていて……階段から落ちたのかも……」
しかし七星の顔色を見た小山内は、何かを察したように声を張り上げた。
「早くストレッチャーを持ってきて!」
「はいっ!」
百花が駆け出し、小山内が七星に必死に呼びかける。
だが七星の意識は、炎が消えるようにゆっくりと薄れていった。
――そこから病棟は一気に慌ただしくなった。
意識を失った七星の検査が始まる。
階段から落ちた可能性から頭部打撲も疑われたが、CT画像でそれはすぐに否定された。
診断は“くも膜下出血”。
しかも動脈瘤の形状と位置が複雑で状態が悪すぎるため、手術が極めて困難なケースだった。
CT画像を見た院長の野中と脳神経外科の医師たちは、深刻な表情を浮かべた。
「まずいですね……」
「意識障害が出ていますから、一刻を争います」
「でも位置が……危険すぎる」
「このレベルの手術、僕たちには到底無理です」
脳神経外科医として優秀な野中でさえ、お手上げだった。
大学病院時代に何度か見たパターンだが、当時は“神の手”と呼ばれた教授一人にしか手術はできなかった。
下手に手を出せば、かえって命を危険にさらす。
一刻を争うのに、どうにも手が出せない状況だった。
そのとき、新人医師の斉藤が声を張り上げた。
「尾崎先生ですよ! 尾崎先生ならできます!」
「でも、今うちにはいないんだ。無理だよ」
「呼べばいいんですよ。そういう約束でしたよね? 尾崎先生を東京に帰す条件として!」
野中は短く息を吸い、低く落ち着いた声で言った。
「……よし。優人を呼ぶぞ。至急、手術の準備を進めてくれ。それと、遠坂さんの状況も逐一報告するように」
「「「「はいっ」」」」
医師たちは一斉に動き出し、七星の緊急手術の準備が始まった。
その頃、優人は術後患者の病室を回っていた。
「では、予後も順調なので、来週の月曜日、退院しましょうか?」
「退院ですか? ああ、よかった! 先生、ありがとうございます」
「それまではあと数日、リハビリ頑張ってくださいね」
「はいっ!」
高齢の男性は、見舞いに来ていた妻と手を取り合いながら、嬉しそうに微笑んだ。
病室を出た優人は、同じ医局の医師に呼び止められた。
「尾崎先生、大至急医局に戻ってください!」
「大至急? 何かあったの?」
「と、とにかく急いでっ!」
後輩のただならぬ様子に、優人は足早に医局へ戻った。
戻るなり、受話器を手渡される。
「もしもし?」
「優人、大変だ」
「先輩、どうしたんですか? 携帯じゃなくてこっちに……」
「今すぐ来てくれ。頼む!」
「え? 何かあったんですか?」
優人が驚いて目を見開いた瞬間、野中が苦しげな声で告げた。
「いいか、落ち着いて聞けよ。七星ちゃんが倒れた。くも膜下出血だ」
その瞬間、優人の脳裏に、亡き妻が倒れた日の光景がよみがえった。
あの日も、危篤の知らせは電話だった。
「優人、しっかりしろ! 聞いてるか? 優人っ!」
その声にハッと我に返り、優人は受話器を握りしめて叫んだ。
「七星の……七星の意識は?」
「意識レベルは急低下している。破裂した動脈瘤がまずい位置にあって、お前しか手術ができない。頼む。今すぐ来てくれ!」
優人は時計を見てから振り返り、脳神経外科部長の顔を見た。
部長はすでに状況を把握していたのか、大きく頷いた。
それを確認し、優人は野中に返事をした。
「分かりました。すぐ向かいます。向かっている間にCT画像を送ってください……それと七星の状態も!」
「分かった、すぐ送る。待ってるぞ」
優人は白衣を脱ぎ、荷物をまとめて出口へ向かった。
そこへ同期の宏太が笑顔で入ってきた。
「ドクターヘリの使用許可、取ってきました~」
「おお、でかした!」
「仕事早いね、伊藤ちゃん」
「どうもどうも」
宏太は優人の肩を叩き、真剣な声で言った。
「ヘリならすぐだ」
優人は真剣な眼差しで宏太を見つめ、大きくうんと頷いた。
「ありがとう」
そして医局を飛び出し、屋上へ向かった。
一連の流れを黙って見ていた麗華は、呆然と優人の背中を見つめていた。
そんな彼女に、宏太が近づき、静かに言った。
「無駄なことをしてもだめなんだよ。あの二人はもう強い絆で結ばれてる。きっと天国の美奈子さんが結び付けたんだと思うよ」
そう言い残し、宏太は口笛を吹きながら席へ戻っていった。
強い屈辱感に胸を締めつけられながら、麗華は両手を固く握りしめ、青ざめた表情でその場に立ち尽くしていた。
コメント
29件
もぅ読みながら助けてってないちゃってる😭 それにしても恋愛マイスター素晴らしい👏👏👏
直ぐに見つけてもらえて良かった!!くも膜下出血… 優人先生、お願い🙏七星ちゃんを助けて…きっと優人先生なら大丈夫!! わーん😭心配で仕方ないーー( ´•̥̥̥ω•̥̥̥`)
百花ちゃん見つけてくれてありがとう 師長さんも野中院長も そして斎藤先生もみんな七星ちゃんを助ける事だけを考えてくれてありがと そしてドクターヘリを用意した伊藤先生ナイスです あとは優人先生の神の手で七星ちゃんを助けて!そしてトラウマから脱出してなんとしても手術成功させてね きっと七星ちゃんは先生を信じているからね