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私の名前は田中みゆ。
黒岩 竜一と仲が良く、竜一とは中学2年の頃からずっと同じクラスメイトだった。
同じ高校に行ったのも仲が良いというのもあるが、1番の理由は部活動だ。
私は走るのが好きだから中学の頃から陸上部に入り、大会等ではよく1位か2位を取り、良い成績を残していた。
高校でも良い成績になると期待されていたが、1年生最後の夏の大会、長距離走で走っていた私はゴール目前に迫ったところで左脚を骨折し、私の陸上人生は幕を閉じた。
医者からは高校3年間の間は走ることはできないと診断された。
部活動を辞め、もう走ることを諦めた私は、普通の高校人生を歩むことにした…
「ん…ここは…どこ??」
目が覚めると知らない部屋にいた。
「昨日は確か…家に帰って…」
昨日の記憶を思い返してみるが、自分の部屋で寝て、そのあとの記憶がない。
「夢にしては…リアル…」
パジャマで寝たはずだが、なぜか学校の制服で寝ている。
ベッドから起き上がると、骨折した時の足の違和感がないことに驚く。
「は…走れる!!なんで!?」
走れる喜びが溢れるが、逆にこれは夢だと思うと、少し落ち込んでしまう。
一人で盛り上がって恥ずかしくなってきた。
「すみませーん!だれかいますかー?」
部屋の外から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「この声は!?竜一!!」
「ガチャッッッ」
勢いよく開けた。
夢の中でも竜一が出てくる、そう考えて心の中では実は竜一のことが好きなんじゃないかと思ってしまうが、好きという感情なのか自分自身よくわからない。
「竜一見て!私の足っっっっ!?!」
目の前には黒く長い髪に鋭い3つ目、大きな口に、背中には翼が生え、2m以上ある異形な怪物だった。
「ミィツケタァァァァ」
「ひっ!?」
部屋からでてすぐ右の突き当たりの木の扉を開け、
さらに長い廊下が続くが、右か左の分かれ道を右へ走った。
また扉を開けると今度は寝室に辿りついた。
ベッドの下に隠れて身を隠す。
怪物は部屋には入ってこなかった、というより、
私の足の速さについてこれなかったのだろう。
みゆは恐怖で体の震えが止まらない。
「な…なんなの…あれはいったい…」
夢にしては長く、あの異形な怪物は恐ろしすぎる。
しかしそこまで速く動けないので、今の私の足なら逃げる自身があった。今部屋から出れば、あの怪物はいるだろうか??音も聞こえないので、おそらく諦めたのかもしれない。だがしかし、
あまりの恐怖でベッドの下からでることができなくなった….
「ん……またか」
竜一の3回目の夢が始まった。
ベッドに置いてあるノートを開いてみると、昨日死んだはずの相川はるとの名前の上にドクロの文字が書いてある。
「だれが書いてるんだ?このノート…」
クラス全員の名前が書いてある不気味なノートはそのままにして、今回も念の為にハサミをポケットに入れ、扉を開けた。
「あれ?」
一番手前の右側の部屋が空いている。
部屋の中を覗いてみるが、俺の部屋とあまり変わらない。だが少し嗅いだことのある匂いがしたが、思い出せない。
「良い匂いがする…」
他の3つの部屋は相変わらず鍵が掛かっている。
突き当たりの木の部屋を慎重に開け、長い廊下をあまり足跡を立てずにそおっと歩く。
いつ怪物が現れてもおかしくないので、ハサミと逃げる準備をして神経を研ぎ澄ます。
左右分かれ道だ。昨日は左に行き、図書室へ入ったので、今回は右の方へ行ってみる。
だが、竜一の足はぴくりと止まり、息を殺した。
右の扉の前には怪物が何も音や気配をださずに無の状態で、まるで待ち伏せでもしてるかのように立っていた。
「まずい!そおっとだ。左の図書室はまだ探索しきれてないからそっちを探索しよう。」
と心の中で竜一は考え、ゆっくりと図書室の方へ向かおうとした。
だがなぜか怪物はこちらの存在に気づいた。
「トショシツ…」
まずいと思った竜一は急いで図書室へと走り出した。
「ググギャァァァア」
怪物がすごい雄叫びをあげる
図書室はたくさん本棚や机などがあり、隠れる場所が多い。
竜一は図書室の一番奥の本棚の影になっているところに入り、身を隠した。
「ドン!!」
怪物が図書室に入ってくる音が聞こえた。
息を殺し、怪物が去るのを待つが、なかなか図書室からでない。
おそらく、また図書室のどこかで、また音や気配を消し、ずっと待ち続けているに違いない。
5分ほど経っただろうか…流石になんの音も聞こえないので、おそるおそる顔を出して怪物がいないか探してみる。
「い…いない?…入ってくる音は聞こえた気がするんだが…」
すると図書室の入り口から声が聞こえてきた。
「りゅういちー!どこー?」
この声は田中みゆの声だった。
驚いた竜一はつい本棚の影から飛び出して…
「みゆ!?おい!ここから逃げっっ」
目の前に立っていたのは田中みゆではなく怪物だった。
竜一は怪物に騙されたのだ。というよりこの怪物、さっきから俺の考えてることを理解して行動してくる。
心が読めるのかと一瞬考えたが、そんなこと考えてる暇はなかった。
「くっそ、この図書室から脱出しないと」
怪物は扉近くで翼を大きく広げ飛び上がった。
「グギガグゴゴゴ」
次の瞬間、気づくと怪物は竜一の左目をえぐり抜いていた。
「うぅ、ぐぅぁぁぁあああああああああああああ」
目から大量の血が流れ出てくる。左目が見えない。
「いたい、いたい、いたい、いたいいたい!?!!」
もだえ苦しむ俺の姿を見て、怪物は笑みを浮かべ、
美味しそうに左目を飲み込んだ。
怒り、恐怖、憎しみ、たくさんの感情が竜一の
中で葛藤している。
「う…うぅ….おれはここまでなのか…」
諦めるしかないのかと考えてしまうが、もしここで諦めると、まだ片想いの相手に自分の本当の気持ちを伝えていない。
「ま…まだだ、まだ…諦める訳には….」
好きな人に告白するまではまだ終われない。
左目の痛みを受け止め、竜一は走り出した。
「この痛みだって恋の痛みに比べれば…」
「どうせ夢なんだ。我慢するんだ…」
「はしれ…足を動かせ…」
図書室から脱出し、まっすぐ行った反対側の扉へ走る。
怪物は図書室の扉が狭く、出てくるのに時間がかかっている。
「はぁ、はぁ、はぁ、」
なんどもよろめきながらも、今倒れる訳にはいかないと自分を説得し、足を動かす。
そしてやっと扉を開け、寝室の部屋に入る。
「う、うぅ…」
扉を閉め、ベッドの前で倒れてしまう。
「バタッ」
ベッドの下にはなんと、田中みゆが隠れていた。
「みゆ…」
「竜一!?なにやってるの!?」
みゆはベッドからでてきて、竜一の目を見てびっくりしている。
「ねぇ竜一…これって夢だよね?」
俺は震える彼女の手を握って心配させてはいけないと
また嘘をついた。
「これは…夢だ…みゆは悪い悪夢を見ている…」
俺が彼女を守りたい。俺は彼女の為なら死んでも構わない。そう竜一は心の中で決心した。
「そう…だよね…夢だよね…」
みゆは目から涙が溢れ落ちた。竜一は少し疑問に思った。
「なんで…泣いて…るの?」
竜一は質問した。
「なにもないよ」
左足を触りながら笑みを浮かべるみゆを見て
竜一は去年の夏の大会のことを思い出した。
あの日は竜一も観客席で応援していたのを覚えてい
る。
「ごめ…ん」
俺は酷いことを彼女に言ったと思い、誤った。
走れるようになったとはいえ、それを夢だ。悪い夢を見ているんだと言ってしまったことに…
「ドン!!ドン!!ドン!!ドン!!ドン!!」
いきなりドアが怪物によって叩かれている。
「グギャギャギャギャ」
怒り狂っているのかドアの向こう側から甲高い声を上げている。
無理に立ちあがろうとする竜一にみゆは肩を貸す。
寝室の反対側にはまた扉があるのでみゆが開けた。
長い一本の道が続いていて、奥に赤い扉が見えている。
竜一は赤いドアを指差し、
「あのドアを…あけ..るんだ…」
竜一はみゆの肩を借り、二人で赤い扉へ向かう。
「ドーーン!!」
後ろで扉が吹き飛ぶ音が聞こえた。怪物が扉を吹き飛ばしたのだろう。
「グギャギャギャギャァァァァァァ」
怪物はすごい勢いで二人に迫ってきた。
「行って!!!」
赤い扉を開け竜一を突き飛ばした。
「まって!みゆ!?!」
竜一は手を伸ばすが届かず、気が遠のいていく。
「まだ…みゆに…」
みゆは怪物に捕まり貪り喰われていく…
「竜一…」
最後にみゆが何かを伝えようとしたが…
わからなかった…