テラーノベル
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放課後、教室の扉が静かに閉まった。遥はまだ、体の奥にあの冷たい異物を感じていた。
誰もいないはずの教室の中、空気は重く、息苦しい。
「おい、こっち来いよ」
背後からの声に、振り返る間もなく腕を掴まれた。
「なにビクビクしてんだよ」
冷たい指先が無理やり身体を押さえつける。
遥の胸は締め付けられ、呼吸は浅くなる。
少しずつ、ゆっくりと始まった。
拳が腹を撫でるように、だが確実に痛みを与える。
一発、二発、三発――強さは徐々に増していく。
蹴りが続く。
靴の硬さが身体に食い込み、じわじわと痛みが広がる。
呻きそうになるのを必死にこらえる。
周囲の嘲笑が遠く、頭の中だけが静かに狂っていくようだった。
「お前みたいなのがいるから、みんなイライラしてんだよ」
その言葉が何度も繰り返され、遥の心を引き裂いた。
痛みが身体を蝕み、羞恥が心を染めていく。
逃げ場も助けもない。
じわじわと削られる日々の延長線上に、今のこの瞬間があった。
遥はただ、耐え続けるしかなかった。
泣き声も叫びも、誰にも届かないまま。
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