テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
翌日も放課後、当然のように大地は隼人の隣に立っていた。
「はいはーい!今日もナビお願いしまーす!」
「……おまえな」
「いいじゃん、隼人と歩くの楽しいし!」
「……っ」
その無邪気な笑顔に、隼人の胸がまたざわつく。
昨日からずっと落ち着かない。夜も寝つけなかった。
(なんでだよ……なんで俺だけ、こいつに振り回されんだよ)
駅までの道を歩きながらも、大地はあれこれと話題をふってくる。
給食のパンが固すぎただの、体育で自分だけボールに当たりまくっただの、どうでもいい話ばかり。
それなのに、気づけば隼人は笑いそうになってしまう。
「……なぁ、大地」
「ん?」
「おまえ、俺をからかって楽しいか?」
「え?めっちゃ楽しい!」
「……ふざけんな!」
突然立ち止まり、隼人は大地の腕をつかんだ。
驚いて振り返った大地の笑顔が、一瞬止まる。
「おまえ……いつもヘラヘラして、俺のこといじって……俺がどんな気持ちで見てんのか、わかってんのかよ!」
「……」
「俺だけだぞ、こんなに振り回されてるの!わけわかんねぇんだよ!」
声が震えていた。怒鳴っているのに、怒りとは違う感情が混じっている。
大地は数秒だけ黙り込み――やがて、ふっと笑った。
「……なんだ、隼人。オレのことちゃんと見てくれてんだな」
「はぁ!?」
「いや~嬉しいわ!オレのネタ、そんなに効いてたんだ!」
「違……っ!」
「いいじゃん、オレが笑わせる。隼人は怒っても照れても、ちゃんと人間なんだってわかるしさ」
にかっと笑う大地に、隼人は言葉を失った。
本気でぶつけた苛立ちを、どうしてこんなにあっけらかんと受け止められるのか。
それどころか、安心したような顔をしている。
「……おまえ、ほんとバカだろ」
「うん!バカで明るい転校生、大地でーす!」
また勝手にポーズを決めて、すぐに歩き出してしまう。
腕を引かれた隼人は、そのまま隣に並ぶしかなかった。
(……わけわかんねぇのは、やっぱ俺の方だ)
隼人は、胸の奥のもやもやがますます膨らんでいくのを感じていた。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!