翌朝。校門をくぐった瞬間から大地は全開だった。
「おーい、みんなぁ! 聞いてくれ! 今日の空、青っ!」
ただの天気報告に、通りすがりのクラスメイトが一斉に吹き出す。
「大地、朝からテンション高すぎ」
隼人が肩で笑うと、大地は両手を広げて回転した。
「昨日がんばったご褒美に、太陽さんがスペシャルブルーをプレゼントしてくれましたー!」
教室に入れば、萌絵が待ち構えていた。
「ねえねえ、昨日病院だったんでしょ? おばあちゃん大丈夫?」
「うん! 点滴パワーで復活目前! 元気玉も作ってきたし!」
「元気玉って何よ」と萌絵が突っ込み、周りの女子もくすくす笑う。
その輪に涼も合流。
「昨日の大地、連絡返さないから心配してた」
「ごめんごめん。隼人がねー、めっちゃ頼れるナイトだったんだぜ!」
大地がドンと隼人の背中を叩く。
教室のあちこちから「へえ〜」「ナイト?」と好奇の視線が飛ぶ。
隼人は軽く咳払いしつつも、顔の奥がじわっと熱くなる。
「……大げさ言うなよ」
「いやほんと。白馬こそなかったけど、車代わりのタクシーで爆走してくれたし!」
クラスメイトが一斉に「王子だ」「イケメン」と盛り上がり、隼人は苦笑。
その横で大地は机に飛び乗る勢いで両腕を広げた。
「よーし、ナイト隼人に感謝を込めて、今日のホームルームは“ありがとう劇場”開演だ!」
先生が入ってくる直前まで、教室は大地の独壇場。
笑い声が響き、昨夜の心配が嘘のように、朝はいつもの明るさで包まれていた。