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『言葉』というものはとても怖い。言った側にとっては些細な内容だったり、短い単語だろうが、捉える側の受け取り方次第でどんなものにでも変化する。幸せを運ぶ言の葉になる事もあれば、刃物にだってなったりもするのだ。
「こちらの世界のトウヤ様の事を教えてもらっていたんですよ。どの様な方で、何をしているのかなどをです」
「……この世界の、僕の事を?」
ルナールの言葉を聞き、柊也がその場に立ち止まる。柊也にとって、ルナールの発した言葉は、完全に後者だったみたいだ。
自分の事を知って欲しい気持ちはあるが、この世界に居る方の——となると、話は別だ。
……いずれ、もしかしたら明日には、どういった結果になろうがルナールとは別れる事になる。二人目の【純なる子】と共に、従来通り呪いを抑え込むか、【孕み子】の望みを叶えてみる方法を選ぶか。後者を選べば、最悪の場合は『ニャルラトホテプ』の後悔の念とやらに喰われて死ぬかもしれない。
(だから……ルナールは『僕』の代わりに、この世界の僕に興味を持ったの?同じ姿ならそれでいいって感じか?……や、まぁ、確かに僕らは付き合ってる訳じゃないけど、だからってそれはないんじゃ?僕が酔っているって前提があったかもしれないけど、それでも僕らは、あ、熱い夜を過ごした間柄だというのに、ルナールは……どっちの『僕』でも、寂しくさえなければそれでいいの?)
「はい。苦労無く生活されているのかだけが気になって——」
俯き、立ち止まったままの柊也に気が付き、ルナールが後ろを振り返った。
自分が今話した内容が聞こえていたのかも怪しい距離に戸惑い、タッタッタと柊也の元へと慌てて戻って行く。
「トウヤ様?どうされましたか?」
ルナールが柊也の傍に寄り添い、肩に手を置く。急にどうしたのだろうかと思い、ルナールは柊也の顔を覗き込もうとした。だが、顔を見られる前に柊也はガシッとルナールの手首を掴み、急に前へと進み出した。
「ト、トウヤ様?トウヤさ——」
ずんずんと前に進む柊也について行きながら、ルナールが何度も呼び掛けるが、返事はない。何か機嫌を損ねた事は読み取れるが、ルナールには原因がわからなかった。
巨人用の廊下の途中にあった大き過ぎる家具の隙間にルナールを引きづり込み、壁側にルナールを引っ張り、柊也は彼の背中をドンッと壁へと押し付けた。……のだが、身長差のせいで、顔の横に手をつく事が出来ず、手はルナールの脇の随分下だった。
世の女性達の心をきゅんとさせるらしい『壁ドン』が上手くいかなかった悔しさを少し感じつつ、柊也が不満でいっぱいの顔でルナールを下からキッと睨みつけた。
目の合ったルナールは、睨まれているという状況だというのに、とても嬉しそうに口元を震わせている。『壁ドン』はどうやら充分効果があったみたいだが、柊也がその事に気が付ける余裕はなかった。
血が垂れ出しそうな鼻をそっと手で押さえ、ルナールが少しだけ視線を逸らす。『これは何のご褒美なんだろうか』と見当違いの事を考えていると、口元をへの字に曲げた柊也がルナールの着ている深緑色をしたローブを剥ぎ取り、服のボタンを乱暴に外し始めた。
「え?何をして……」
「煩いな!ルナールは黙ってて!」
『僕』は『僕』であって、この世界の僕は『僕』じゃない!ルナールは『僕』のモノじゃないってわかってはいるけど、ルナールを此処の僕には渡したくない。自分に嫉妬とか、もう意味分かんないけど、でも自分じゃ無い『自分』はどうやったって『自分』じゃないんだから!
——と、柊也の頭の中はぐちゃぐちゃで完全に煮詰まっている。何をするべきで、するべきじゃないかなど、冷静に判断出来る余裕が今の彼からは完全になくなっていた。
シャツのボタンを全て外され、ルナールの前がはだける。白くて美しい筋肉質な胸元が露わになり、同性の胸だというのに、柊也の顔がカァと赤くなった。
(僕が、男性の胸に対してこんな風に感じる日が来るなんて……)
夢と希望が詰まっているらしい女性の柔らかな胸とは違う、男らしい厚い胸板にそっと手を当てる。手の平でルナールの激しい心音を感じ取り、柊也の呼吸が乱れ始めた。
(ルナールもドキドキしてくれているの?……それは、『僕』が触ったから?)
色々訊いてみたい気持ちを押し殺し、白い肌に咲く愛らしい桜色の膨らみにおそるおそる柊也が顔を近づける。柊也がその尖りを口に含んだ途端、ぷくりと膨れ始めた胸を舌先で辿々しく舐めると、「あっ……」とルナールが甘い声をあげた。
「トウヤさ……ま?あの、何を——んっ」
柊也に甘噛みされ、ルナールが言葉を詰まらせた。あまり上手い愛撫だとは正直言えないが、だからこその良さが全身を震わせ、ルナールの肩から力が抜ける。
(こ、こんな事……トウヤ様が?……いったい、どうし……あぁっ)
必死に柊也が胸を吸い、舐め、甘噛みし——と、反対側の尖りを指先でコロコロ転がしたりまでするもんだから、ルナールの表情がだんだん淫猥なものへと変わっていく。こうなった理由は気になるが、そんな瑣末事は一旦隅に置き、ルナールが柊也の体をそっと抱きしめた。
無意識に体を擦り寄せてくる柊也の甘える姿が恋しくてならず、抱き締める腕につい力が入る。
「トウヤ様、唇へも……キスして頂けませんか?」
柊也の頰に両手を添えて、軽く上を向かせてルナールがおねだりをする。恥ずかしさから一瞬柊也の顔が強張ったが、欲求が即座に勝ち、背伸びしてルナールの顔に近づいて来た。腰を折り、足りない距離をルナールが埋める。
互いの熱い唇が重なって絡めた舌先にチョコレートの甘い味を感じ、柊也が急に発情したみたいな状態になった理由をルナールが勝手に察した。
「トウヤ様……酔っていますね?チョコレートのブランデー程度でコレとは……あぁ、先が思いやられますよ」
ルナールの発言は呆れた様な言い回しなのに、頰の染まる赤い顔はニヤリと笑っていて、悪巧みを思い付いた子供みたいだ。
『酔っていない』と反論しようとした柊也だったが、再び重なる口付けの中に言葉が消えていく。『並行世界の自分に嫉妬した』とも言いづらく、柊也はこの行為を昨夜の様な『置き土産』にする決意をした。
(何があっても忘れないで、『この僕』を——)
必死に舌を絡ませ、舌先でルナールの歯を器用に舐める。そのたびにルナールが肩を震わせて、柊也の服をぎゅっと掴んでくるもんだから、彼は初めて『抱く側の優越感』を噛み締める事が出来た。
「こんな……場所では」
家具の物陰に居るとはいえ、此処は廊下だ。
どんなに広く、体育館かずらりと並んでいるような空間だろうが一応廊下には変わりがなく、誰がいつ通るかわからない。『流石に場所を変えねば』と思ったルナールだったが、すっかりスイッチの入った柊也はそういった判断力をも失っている。
ルナールの履くトラウザーズの前を柊也が開け、下着をさげる。ぶるんっと剥き出しになった屹立はすっかり元気で、先端からは先走りの汁が垂れ出していた。
気持ちが萎えるくらいの大きなソレに小さな手を添えて、柊也が口を近づける。その途端に「トウヤ様⁈何をなさって——んあ!」と大きな声が出てしまい、ルナールが咄嗟に口元を押さえた。
「イケないのに、ガマン汁は出るとか……半端な『呪い』だね」
「だ、だから、私のコレは……の、『呪い』じゃ……ぁ、……んっ」
口内にはどうやろうが入らないので、舌にたっぷりとヨダレをのせてルナールの屹立の根元を手でキュッと掴み、しごき、愛撫をして快楽をその身に刻む。裏筋を下から上へと舐められた時にはもう、達する事の出来ないこの体を恨みたくなるくらい、ルナールが悦楽に染まった。
腰が揺れ、ルナールが場所も忘れて柊也の与える快楽を貪る。髪を無造作に掴まれたり、熱い手で肌を撫でられるたび、『男』としての満足感を柊也は感じた。
「ト、トウヤ様、このままでは、生殺しです……挿れ、挿入たい……」
「イケないのに?それでも……『僕』が欲しいの?」
「トウヤ様と一つになれない方が、辛いです……あの心地よさを、いつまでも味わいたい、貪りたい……あぁっ……」
とろりと溶けた目で懇願され、柊也の体が激しく震えた。この優越感は何物にも変えられぬ淫猥さに満ちている。昨日のルナールもこんな気持ちだったのかなと思うと、より強い劣情を柊也は感じた。
酔った時の記憶はないはずの柊也と会話が成立している不自然さに気がつかぬまま、ルナールが震える手で柊也の履くトラウザーズを脱がせていく。双丘に隠れる蕾からはもう蜜が滴り落ち、昨夜深く愛し合った余韻からか、指がスムーズに入っていった。
「あぁぁ!ルナッ……そ、そんな一気に入れっ……あ!」
「しー……ここは廊下ですよ?トウヤ様」
「……そ、そうだった……どうしよぅ……んっ」
前立腺をとんとんと指先で叩かれ、柊也の腰が震える。困った事に『部屋まで移動してから』など、そんな時間さえも惜しい。ルナールが早く欲しい、もうそれ以外に何も考えられない。
「トウヤ様、これを噛んでいて下さい」
ポケットから取り出したハンカチを口元に差し出され、柊也が口を開けた。だが、赤くて美味しそうな舌を見た瞬間、反射的にルナールが貪る様な口付けをする。柊也の『ハンカチは⁈』といった疑問は、シャボン玉みたいに弾けて消えた。
「ルナ……ッ」
「ト、トウヤ……さま」
名前を呼び合いながら互いの唇を離し、今度はちゃんと、ルナールが柊也の口にハンカチを詰めた。軽くそれを噛み、柊也がルナールに抱きつく。それを合図としたかのようにルナールは柊也の体を抱きかかえると、向かい合ったまま濡れそぼる蕾のナカに、ルナールが自らの怒張する屹立をゆっくりと挿れ始めた。
「んぐっ!んんっー!」
ハンカチを強く噛み、柊也の眦から涙が零れ出る。十分に解れたままであったおかげでルナールの屹立をその身に受け挿れても痛くはい。だが、桁違いのサイズにゆるゆると弄られては異物感と快楽とが入り混じったものが全身を駆け抜けてしまい、声を我慢しようがない。ハンカチを噛ませるというルナールの判断は大正解だったようだ。
「あぁ……ナカが、熱くて……きもちぃ……くっ」
柊也を体を上下に揺さぶり、ルナールが快楽を貪る。体位的にはとても体力を使うものだが、柊也が小さくて、軽いおかげでルナールは行為にのみ集中出来た。体を支える為にと触れている双丘はもにゅっとしていて触り心地が最高だし、目の前にある声を耐えながら涙を流す柊也の顔は色っぽいしでもう、すっかり夢見心地な状態だ。もちろん、こうも積極的に求めてもらえた事もすごく嬉しかった。
酒は常備品、酒は常備品!と胸に誓いながら、ルナールは柊也の汗っぽい額にちゅっと甘えるようなキスをした。
「好きですよ、トウヤ様……」
「んぐぅ!んんっ」
耳を噛み、舐め、ルナールが愛を囁くが柊也には響いていない。その身に挿入る屹立の深さと、前立腺をゴリゴリと擦られる事で体を支配する直接的な快楽のせいで、すっかり頭の中は思考停止状態だ。バカになった頭ではどんなに心から欲しい言葉を言われても、ルナールに抱きつき、もっと沢山淫楽を楽しもうとするだけで精一杯だ。
だがそんな柊也が可愛くって、恋しくって、喰べてしまいたいと思いながら、ルナールは柊也の体を穿ち続けた。
「ココですよね。気持ちいい、でしょう?あぁ、淫らで最高ですよ。ここがベッドではないのだけが残念です」
「くふ!んっ!ん……」
柊也が強く掴むもんだから、前のはだけたルナールのシャツはもう皺くちゃで見れたもんじゃない。汗もダラダラと流れ出ていて、行為の激しさを物語っている。
「トウヤ様、ずっと……お傍に、貴方だけを……好き、愛して——」
愛を囁きながら、乱れる髪に頬擦りをする。だが、柊也が今もっとも欲しい言葉は、残念ながら全て、彼の耳の中を右から左へと流れ落ちていっていた。
背を丸め、柊也がルナールの胸に縋り付いた瞬間、彼の体が早々に限界を迎え、勢いよく吐精した。びくんびくんと体格に似合った愛らしい屹立が震え、白濁液が勢いよく吐き出される。互いの腹と服をべちょりと汚し、柊也の全身から力が抜けた。
「可愛い……トウヤ様」
ぐったいとした体を緩やかに抱き締めながら、柊也の蕾から己の屹立を抜き取る。吐精出来ぬ身を再び恨みつつ、ルナールは気を散らそうと何度も深呼吸をした。
咥えていたハンカチを取り、柊也がそれを感慨深げな顔で強く握る。でも『何やってんだ、八つ当たりにしたって、コレはやり過ぎた』と、心の中は後悔でいっぱいだった。
「ルナール……ごめん。なんか、えっとこんな場所で……僕、その……」
「謝らないで下さい。嬉しいですよ、こうやって求めて下さって。アルコールの……せいだとわかっていても、それでも……」
ルナールの抱き締める力が一瞬強くなったが、すぐに体を離した。
「まずはお風呂に入らせてもらわないとですね。今から行く部屋にあるといいんですけど」
「そ、そうだね……あはは」
照れ臭そうに、柊也が笑う。嫉妬心で煮詰まっていた頭はいくぶんスッキリした気がしたが、体はすっかりぐちゃぐちゃになっていた。
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