テラーノベル
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正直、最初は気づかないふりをしてた。というより、「気づいてる」って認めたくなかった。
遥が殴られてるわけじゃない。
叫んでるわけでもない。
ただ、いつも同じタイミングで席を立たされて、
同じ顔で笑われて、
同じ順番で無視されてる。
それを毎日見てる。
俺は関係ない、って思ってた。
関係ない方が楽だから。
でも、遥がいない放課後、
教室がやけに静かになる日があって、
その時だけ胸がざわつく。
「今日、来てた?」
誰かがそう聞く。
来てたよ。
来てたけど、存在してなかっただけ。
俺は、助けなかった側だ。
でも、加害者でもないって言い訳を
何回も頭の中で繰り返してる。
家に帰ると、
どうでもいい動画を流しながら、
なぜか遥の顔が浮かぶ。
あいつ、
何考えてるんだろうって。
ふと、怖くなる。
もし、遥が「もう無理だ」って思ったら、
俺は何を見てたことになるんだろうって。
直接何かが起きる想像はしない。
それでも、
「取り返しがつかない」って感覚だけが
胸に残る。
次の日、遥は普通に来る。
何もなかったみたいな顔で。
それが一番きつい。
俺は救ってない。
でも、見てるだけで苦しくなる自分を、
どこに置けばいいか分からない。
「つらい」って言葉を使う資格がないのは、 分かってる。
でも、
何もしなかった自分が
一番安全な場所に立ってたことだけは、
忘れられない。
遥が生きてる今日を、
俺はただ横で消費してる。
それが、
たぶん一生残る。
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