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夏の体育はプール授業。大地はテンション高く飛び込む準備をしていた。
「ひゃっほー! 水の中でも隼人に会えるなんて最高!」
「授業だっつーの」
隼人はゴーグルを直しながら、ふといたずら心を思いつく。大地が泳いでいるときに、足をぐいっと引っ張ったのだ。
「ぶくぶくぶくっ! ……ぷはっ!」
「おい溺れてんじゃねぇか!」
「隼人〜! 今、俺に“溺れるほど愛してる”って告白したでしょ!」
「してねぇ!」
大地は勝手に解釈して、クロールの手をハートマークにして泳ぎだした。
次はビート板リレー。隼人は大地の板にわざと水をぶっかけ、ひっくり返してやった。
「わー! 俺の板が沈んだぁ!」
「ざまぁみろ」
「いや待て、これって“俺に頼らずに自分の力で泳げ”って、隼人からの熱い応援だろ!」
「違う!」
「つまり隼人は俺の人生のコーチ! 一緒にゴールする未来が見えてきた!」
「黙れぇぇ!」
クラス中が笑い転げ、監視の先生まで笛を口にくわえて肩を震わせていた。
休憩時間。プールサイドで水を飲んでいると、大地のタオルがなくなっていた。
隼人が背中で隠しているのに気づき、大地は指差した。
「……あー! それ隼人が隠したでしょ!」
「知らねぇ」
「うわ、これは完全に“俺が拭いてやる”ってことだな!」
「ちげぇ!」
「よーし隼人、背中からよろしく!」
「しねぇ!」
結局、隼人がしぶしぶタオルを返すと、大地は満面の笑みで自分の肩にかけた。
「ありがと! 隼人のぬくもりタオル、最高だぁ」
「俺は汗で湿ってるだけだ!」
授業が終わり、みんなが更衣室へ引き上げる中、大地はプールの縁に座って夕空を眺めていた。
隼人が不機嫌そうに近寄る。
「……風邪ひくぞ」
「平気平気。隼人がそばにいればポカポカだし」
「……」
「なぁ隼人。今日わかったんだ」
「何がだよ」
「俺、ほんとに溺れてた。でも助けてくれたの隼人だろ?」
「……足つかんだのは俺だけど」
「ほらやっぱり! 俺、隼人の愛に溺れてんだなぁ」
「バカ」
大地は水面を指で弾きながら、にっこり笑った。
「だからこれからも、俺を隼人の水槽に閉じ込めといて?」
「意味わかんねぇよ!」
「溺れっぱなしでもいい。隼人の中で生きてたいから」
「……っ」
夕焼けに照らされたプール。赤く染まった水面に、隼人の顔まで映って真っ赤に見えた。
大地はそんな隼人を見て、また勝手に“今日の愛の勝利”を確信するのだった。