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文化祭。教室は喫茶店に模様替えされ、クラスメイトたちはエプロンやメイド服に身を包んで忙しそうにしていた。
「隼人〜! 俺のエプロン姿どう!? 似合ってる!?」
「……カレーうどん食った後みたいなエプロン姿だな」
「つまり“家庭的で一緒にご飯作ろうね”って隼人の遠回しなプロポーズだな!」
「どこがだ!」
大地はにこにこと働きながらも、隼人の仕掛けを待っている。案の定、隼人はケーキのトレーを大地の席にわざと倒した。
「うわぁ! 俺の服、クリームまみれ!」
「ざまぁ」
「いやいや、これは隼人が俺にウェディングケーキ食べさせてくれたってことだろ!」
「違ぇわ!」
「だってケーキまみれって、新郎新婦がやるやつじゃん!」
「誰が結婚だ!」
クラス中が「また始まった」と笑いながら見守る。
さらに隼人は、大地に給仕用の紙王冠を被せた。
「似合ってんじゃねぇか、新郎様」
「わぁ〜! やっぱり隼人は俺の花婿!」
「からかってんだよ!」
「いいねいいね、じゃあこのまま結婚式ごっこしよっか!」
大地は勝手にマイクを持ち出し、クラスメイトたちを観客に仕立てあげた。
「ただいまより〜! 隼人と大地の文化祭ウェディングを執り行います!」
「勝手に宣言すんな!」
「証人の皆さん、盛大な拍手を!」
パチパチパチッ――なぜか本当に盛り上がるクラス。
隼人は真っ赤になりながらも、突っ込みきれず固まった。大地はその隙を見逃さず、隼人の手を握る。
「誓いますか? 良い時も悪い時も、俺のそばにいてくれるって」
「……は!?」
「はい、誓いました〜! ありがとう隼人!」
「まだ言ってねぇ!」
会場は爆笑と拍手の渦。先生までスマホで写真を撮っている始末。
片付けのあと、二人きりになった廊下で、大地がぽつりと呟いた。
「なぁ隼人。今日の結婚式、俺本気で嬉しかったんだ」
「……お前な」
「俺、隼人とならずっと文化祭みたいに笑って過ごせる気がする」
「……っ」
隼人は何も言えず、ただ大地の頭を軽くはたいた。
その手はほんのり温かく、大地はにっこりと笑った。
「ほら、やっぱり“愛の誓い”だな」
隼人は顔を赤くしながら、「バカ」とだけ呟いた。