テラーノベル
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倉庫の鉄扉がきしむ音とともに、颯馬の笑い声が響く。彼の後ろには三人の友人が並び、鼻で笑うように見下してくる。俺の胸の奥で、まだ温かさの残っていたはずの子犬の記憶が、痛みと怒りに変わって燃えていた。
「お前、まだしぶとい顔してるな」
颯馬は足元に立ち、俺の肩を強く押し下げる。身体が床に押し付けられ、埃と冷たいコンクリートが肌を刺す。
「……あいつ、どうしたんだ?」
俺の声は震え、言葉は低く押し殺したように出た。問いかけというよりも、怒りと悲しみの混じった確認だった。
「は? 何がどうしたって?」
颯馬の目は笑っていない。冷たく、鋭く、ただ俺を試す。
「……あいつを……返せ」
小さく、でも必死に言った。友人たちは肩を揺らして笑い、手を組んで俺を囲む。
「返す? 返せるもんなら返してやるよ、犬みたいに泣きわめくくせに」
一人の友人が鼻で笑う。
「お前が泣くの、マジで面白いな。犬が死んでんのに、何でまだ踏ん張ろうとすんだ?」
颯馬の声は冷徹で、聞くだけで胸が締め付けられる。
俺は床に拳を打ちつけ、わずかに身体を起こす。怒りと悲しみで手が震える。
「ふざけんな……あいつを……俺に返せよ!」
「おいおい、逆らうなよ。逆らうともっと痛い目に遭うぜ?」
颯馬はにやりと笑いながら、背中を押し、俺の腕を押さえつける。友人たちは容赦なく足をかけ、肩や腰に重みをかけてきた。
「くそ……俺が悪いって……思わせんなよ」
俺の声は怒りで震え、涙も混じる。自己否定や自己嫌悪の感覚を振り切り、子犬を守れなかった悔しさがすべてを支配していた。
「犬のことだけ考えてんの? 自分のことはどうでもいいのか?」
颯馬が冷たく吐き捨てるように言う。その言葉は俺を揺さぶり、痛みと屈辱をさらに深く突き刺す。
「……俺は……あいつが……」
言葉が詰まる。悔しさと悲しみで、身体が小さく縮こまる。友人たちはその隙に笑いながら手を伸ばし、肩や頭を押さえつけ、さらに無力感を植え付ける。
「ほら、もっと小さくなれよ。犬を失って震えてるだけのくせに」
一人が足で胸を軽く蹴り、俺はむせた。
それでも、俺は声を振り絞る。
「返せよ……あいつを……」
颯馬は一歩近づき、顔を近づけて低い声で吐き捨てる。
「返せるわけねえだろ。死んだんだ、犬もお前の気持ちも。諦めろ」
言葉の重みと冷徹さに、身体も心も押し潰されそうになる。しかし、俺は床に沈み込みながらも、必死で拳を握る。子犬の温もり、子犬の無邪気な目を思い出し、心の奥で「諦めない」という声を小さく反響させる。
友人たちは俺の小さな抵抗を見て、さらに嘲笑する。肩を押さえつけ、足で踏みつけ、身体全体で無力感を押し付ける。颯馬の手は冷たく、強く、背中に打ち込まれる。
「お前のその弱々しい反抗、面白いな。犬のことだけでそんなに必死になるなんて、ほんとに情けねえ」
俺は痛みと屈辱に耐えながらも、声にならない叫びを胸に抱き、子犬を思う。身体は痛く、声は出せない。けれど、心の中ではまだ、必死に抗う小さな火が消えてはいなかった。
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