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チャイムが鳴る。
教室中がざわつく。
その中心に、いつものように遥の“処理”を始める連中が集まってきた。
「ほら、来いよ」
腕をつかまれ、そのまま机に押しつけられる。
痛みよりも、誰も止めない光景のほうが遥の頭を冷やす。
「なんで来いよって言われて来ねぇの? 反抗期?」
「てか今日さ、遅ぇんだよ動きが。やる気ねぇの?」
遥は歯を食いしばる。
「……具合悪いだけだ」
「は? 知らねえよそんなの」
肩を殴られ、頭が揺れる。
教室の端では女子がスマホを向けていた。
女子リーダーが前に出て、遥のアゴを指で押し上げた。
「ちょっとさ、うちらの中で話したんだけど」
その声は、妙に明るい。
「遥ってさ、クラスで “特別扱い” にしたほうが良くない?」
その場の数人が笑う。
「特別って……何だよ」
「決まってんじゃん。
下。
いちばん下。
ぜーんぶ押しつけられる側。
うちらに逆らえない係。
それ以外の価値、無いでしょ?」
遥の胸が縮む。
言葉が出ないと、女子はさらに踏み込んでくる。
「ほら、黙った。
こういうときだけ“人間ぶる”のマジでウケるんだけど」
男子が笑い、机を叩いた。
「てかもう“黙る=肯定”で良くね?」
「それだ!
こいつ黙るときって全部“認めたとき”じゃん」
「今日からそういうルールでいいだろ」
クラスの空気が、一瞬で結論を固める。
遥の意志なんて存在していない。
男子のひとりが背後から遥を押し倒す。
床が近い。
呼吸が乱れる。
「おい、立てよ」
「……っ」
立ち上がる前に、腹を蹴られた。
声が勝手に漏れる。
「ほら見ろよこの顔。
ちょっと蹴っただけでこれ。
弱ぇのマジで便利すぎんだろ」
別の男子が靴の先で遥のバッグを踏む。
「なあ、今日の“仕事”どうすっか?」
「昨日より増やすに決まってんだろ。
動画バズってんだから、スポンサー料ってやつ」
「スポンサーって……ふざけてんのかよ」
言った瞬間、頭を押さえつけられた。
「ふざけてんのはどっちだよ。
てめぇで燃料投下してんだろうが」
女子が肩を震わせて笑いながら言う。
「ねえ遥、
アンタがどんな顔して耐えてるかを見るの、
うちらのストレス解消にちょうどいいんだよね」
「え、聞いた?
ストレス解消だってよ、自分の役割わかってんじゃん」
「ほらなんか言えよ」
「……俺……別に……好きで……」
「聞こえなーい!」
「声ちっさ!」
「ほら、はっきり言え!」
「“俺はクラスの最下位です”」
教室のあちこちでスマホが掲げられる。
逃げ道はない。
沈黙は地獄だが、喋ればもっと地獄。
喉がひりつき、視界が揺れる。
それでも、言葉は絞り出される。
「……俺は……クラスの……最下位……だよ……」
爆笑。
机を叩く音。
女子のひそひそ声。
男子の舌打ちまじりの笑い。
その全てが、遥の“位置”を固定していく。
廊下に出た瞬間、知らないクラスの男子が寄ってくる。
「お前だよな、“最下位のやつ”」
「動画見た。
あれマジで作り物じゃねぇの?
あんな顔で言えるやつ、初めて見たわ」
「ちょっと顔上げてみ?」
顎をつままれる。
引き剥がそうとしても力が足りない。
「抵抗すんの下手すぎ。
弱いのに妙に生意気じゃね?」
「今度うちのクラスにも来いよ。
“見せ物”足りないからさ」
全部が軽いノリのようでいて、
全部が本気で、
全部が残酷だった。