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その日の夜。隼人はベッドに転がりながらスマホを握りしめていた。
 (柊め……! 何が「一緒に出かけようぜ」だよ。こっちはケーキの予約までしたってのに!)
 グループLINEには相変わらず大地と柊の軽いノリが続く。
 柊:「じゃ、映画とゲーセンで!」
 大地:「おっけー!」
 (やめろやめろ!勝手に決めるな!)
 思わずクッションを顔に押しつけ、声にならない叫びをあげたその時、
個別チャットの通知が震えた。
――萌絵からだ。
 萌絵:隼人、顔こわかったよ。
サプライズどうする?
 
 
 隼人はため息をつき、即返信。
 隼人:バレてないよな?
 萌絵:バレてない。大地、完全に無自覚。
 隼人:なら続行。なんとか当日柊の予定を崩すしかない。
 
 
 返信してすぐ、涼からもメッセージが飛ぶ。
 涼:巻き返すなら俺ら協力する。
でも柊、簡単には釣れないぞ。
 
 
 隼人は思わず天井をにらんだ。
 (そうだよな……柊、案外頑固だし。大地も楽しみにしてるっぽいし)
 その時――新しい通知。
今度は大地から、個別メッセージ。
 大地:隼人、誕生日近いからって
みんな変にそわそわしてる?
なんか隼人まで妙に落ち着かない気がしてさ。
 
 
 心臓が跳ねた。
 (ヤバい、気づかれたか!?)
 隼人:え、いや別に。
 大地:そっか。
じゃ、当日よろしく!柊との予定も楽しみだし。
 
 
 “柊との予定も” の文字に、隼人はクッションに顔を埋めてごろんと転がった。
 (……何その無邪気な一言。余計モヤるだろ!)
 
 
 翌日。
朝の教室で、隼人は覚悟を決めた顔で萌絵と涼に小声で告げた。
 「計画は強行する。柊のスケジュール、なんとしてもクズす」
 萌絵がニヤリ。
 「いいね。柊を出し抜く作戦、面白そう」
 涼も肩をすくめながら笑う。
 「大地が知らないままドタバタするの、絶対楽しい」
 廊下の向こうから現れた大地が手を振る。
 「おーい、今日の放課後ゲーセンどう?」
 隼人は一瞬だけ眉をひそめたが、すぐいつもの笑顔を作った。
 「……おう、考えとく」
 胸の奥のモヤモヤはまだ消えない。
でも――サプライズ成功のためなら、ちょっとした混乱も悪くない。
隼人は内心で拳を握り、次なる一手を思案しながら、大地の隣へと歩いていった。