テラーノベル
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※小学生。
「おい、そこどけよ。俺たち通るんだ」
「うわ、見ろよ、まだビクビクしてる」
「また机にぶつかるんじゃね?」
遥は小さく身を縮めながら、押しのけられる通路を必死で抜ける。背後から笑い声が絶え間なく響く。
「なあ、昨日のノート、どこ置いた?」
「こいつ、また忘れたんじゃない?」
「さっさと拾えよ、手ぇ汚すぞ」
手渡された教科書を落とさないように持つだけで、また笑いの対象になる。
「見てみろ、ペンを握る手まで震えてる」
「ちょっと、髪の毛掴んでみようぜ」
「うわ、ほんとにビクビクしてる」
遥は声を押し殺し、ただ「ごめんなさい」と呟く。だが、それがまたからかわれる。
「もっと早くやれって」
「おい、こっち向いて笑ってみろよ」
「何その顔、超ウケる」
昼休みの校庭。ベンチに座ろうとした瞬間、ボールが遥の足元に転がり、男子数人が一斉に囲む。
「おい、拾えよ。ちゃんと投げ返せ」
「これでいいのか? 遥、お前手ぇ遅いぞ」
「笑いながらやらないと意味ねえだろ」
女子も加わる。指を鳴らして囁く声。
「ねえ、こっち見て。あの子また必死になってる」
「かわいそうだけど、面白いよね」
遥は、笑い声と嘲りの波に押し流され、何とか従うしかない。心の中では、必死に自分を責める。
「どうせ俺なんて……また失敗だ……」
「もっとちゃんとやらなきゃ……でも、どれだけやっても……」
掃除当番の時間。複数の生徒が命令を飛ばす。
「床、もっと念入りに拭け!」
「雑巾、もっと力入れろ!」
「拭き残し見つけた、やり直せ」
遥はひたすら屈み、手を動かす。汗で手が滑り、雑巾を落とすと、再び笑い声が飛ぶ。
「おい、見ろよ。手ぇプルプルだ」
「もっと必死になれよ」
「こんな弱いのが掃除しても意味ねえ」
息が上がる。頭を下げ、ただ耐える。教室、廊下、校庭——どこにいても、見られ、笑われ、追い詰められる。
遥の心は押し潰されそうだ。
「俺、いなくなった方がいいのかな……」
声にならない呻きが、喉の奥で震える。誰も助けてくれない。学校全体が、自分を踏み台にして楽しむ波に支配されている——それを遥は体全体で感じ続ける。
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