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ruruha
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#一次創作
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放課後。
教室にはまだ何人か残っている。
前の方では誰かが課題をやっていて、窓際では部活の時間まで暇を潰ている生徒がいる。
生徒は椅子を前後に揺らしながら言った。
「怒れないんです」
遥は向かいの席に座っている。
「誰に」
短く。
「色々です」
生徒は言う。
「友達とか、家族とか」
一拍。
「先生とかも」
教室が静まる。
遥は聞く。
「怒ってないのか」
短く。
生徒は少し考える。
そして首を振った。
「いや」
一拍。
「怒ってると思う」
沈黙。
「でも出ない」
視線が落ちる。
「その場では平気なんです。別にいいやってなる」
一拍。
「なのに帰った後」
苦笑する。
「めちゃくちゃ腹立ってくる」
遥は机に指を置く。
「後払いだな」
短く。
生徒は少し笑う。
「何ですかそれ」
遥は言う。
「その場で感じてない。後から請求来る」
短く。
教室が静まる。
生徒は笑ったあと、 少し真顔になる。
「でも」
一拍。
「怒ったら面倒じゃないですか」
遥は黙る。
生徒は続ける。
「空気悪くなるし、嫌われるかもしれないし、神経質だと思われるかもしれない」
一拍。
「だから飲み込む」
沈黙。
遥は聞く。
「いつからだ」
短く。
生徒は止まる。
「……分かんないです」
遥は視線を向ける。
生徒は少し考える。
「でも」
一拍。
「昔からかも」
教室が静まる。
「怒ったところで変わらないとか、我慢した方が早いとか」
一拍。
「そういうの」
遥は何も言わない。
沈黙が落ちる。
生徒は続ける。
「だから最近」
少し笑う。
「自分が何に怒ってるのかも分からない時あります」
教室の空気が少し変わる。
遥は言う。
「怒りってな」
短く。
「感情というより反応だ」
生徒は顔を上げる。
「……反応」
遥は頷かない。
「嫌だった、苦しかった、理不尽だった」
一拍。
「それを知らせる信号だ」
教室が静まる。
生徒は黙る。
遥は続ける。
「でもお前」
短く。
「信号見た瞬間消してる」
沈黙。
「……あ」
小さく出る。
遥は言う。
「嫌だったより先に、仕方ないになる」
一拍。
「腹立ったより先に、自分が気にしすぎかもになる」
教室が静まる。
生徒は言葉を失う。
遥は続ける。
「だから怒りが育たない」
短く。
「途中で全部処理される」
沈黙。
「でも」
生徒は言う。
「怒るのって良いことじゃなくないですか」
遥は少し考える。
「怒鳴るのとは違う」
短く。
教室が静まる。
「怒るって」
遥は続ける。
「嫌だったと認識することだ」
一拍。
「まずそこ」
沈黙。
生徒は机を見る。
遥は続ける。
「お前の問題は」
短く。
「怒りが強いことじゃない」
教室が静まる。
「怒りを感じる権利ごと消してることだ」
沈黙。
その言葉に生徒はしばらく何も返せなかった。
窓の外から吹く風だけが聞こえる。
「……なんか」
小さく笑う。
「俺、ずっと良い人になろうとしてたのかも」
遥はすぐ返す。
「違うな」
短く。
生徒は顔を上げる。
遥は窓の外を見る。
「怒ったら危なかったんだろ」
教室が静まる。
その言葉に、生徒は何も言えなくなる。
遥は続ける。
「怒っても聞いてもらえない、怒った方が損する、我慢した方が安全」
一拍。
「そういう場所だったんだろ」
沈黙。
生徒は目を伏せる。
少し長い沈黙が落ちる。
やがて、
「……多分」
とだけ言った。
遥はそれ以上聞かない。
怒れない人は、怒りがないわけじゃない。
怒ることより、怒らない方が安全だっただけだ。
だから最初に必要なのは、上手に怒ることじゃない。
「自分は嫌だったんだ」と認めることなのかもしれない。
コメント
1件
第4話、読み終えました。 「後払いの怒り」って表現、すごく刺さりました。その場では平気なのに後からどっと来る感じ、わかる気がします。あと「怒りを感じる権利ごと消してる」っていう遥の言葉、胸にきましたね。怒れない自分を「いい人」って誤魔化さず、ちゃんと「そういう場所だったんだろ」って見抜く優しさ。この二人の関係、もっと知りたくなりました。静かな教室と短いセリフだけで、こんなに心揺さぶられるなんて。ruruhaさんの繊細な描写、とても好きです。