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相談者は、椅子に座ってすぐ言った。
「俺、助けられるの苦手」
「知ってる」
「即答かよ」
「入ってきた時点でな」
相談者は鼻で笑った。
「別に強がってるわけじゃない」
「うん」
「助けが嫌いなわけでもない」
「その割に」
「距離取る」
「取るな」
相談者は少し黙る。
「誰かがさ」
「うん」
「『大丈夫?』って言うだろ」
「言うな」
「その瞬間」
相談者は胸の辺りを軽く叩く。
「体が先に引く」
「考える前に?」
「うん」
「理由は?」
「分かんない」
蓮司は少し考えてから言った。
「慣れてない」
「それだけ?」
「それだけ」
相談者は眉をひそめる。
「助けられるのに?」
「助けが継続したこと、あるか」
相談者はすぐに答えなかった。
「……ない」
「一回だけ、とか」
「ある」
「その後は?」
「なかった」
蓮司は頷く。
「だからだ」
「何が」
「助け=一時的って体が覚えてる」
相談者は息を吐く。
「期待すると、後で落ちる」
「落ちる」
「なら」
「うん」
「最初から受け取らない」
「防御としては正しい」
相談者は苦笑した。
「でもさ」
「うん」
「拒むと、冷たいって思われる」
「思われるな」
「最悪」
「最適でもある」
相談者は顔をしかめる。
「どっちなんだよ」
「自分を守るか、誤解されるか」
「二択きつい」
「現実はきつい」
少し間が空く。
「なあ」
相談者が言う。
「助けられ慣れてる人ってさ」
「うん」
「受け取り方、上手いよな」
「上手い」
「断らない」
「断らないな」
「俺、それ見て余計無理になる」
「比較するな」
「してないつもりでも、入ってくる」
蓮司は淡々と言った。
「受け取り方は、才能じゃない」
「え」
「経験値」
「じゃあ俺」
「少ない」
「終わりじゃん」
「これから増やす」
相談者は首を傾げる。
「どうやって」
「小さく」
「またそれ」
「効く」
蓮司は続ける。
「助けを丸ごと受け取らなくていい」
「一部?」
「言葉だけ」
「行動はいらない?」
「今日はな」
相談者は考える。
「『大丈夫?』って言われたら?」
「『ありがとう』だけ」
「助けてもらわなくて?」
「いらない」
「それ、ズルくない?」
「練習」
相談者は少し笑った。
「助けの練習って何だよ」
「いきなり本番やるから拒否反応出る」
「確かに」
少し沈黙。
「俺さ」
「うん」
「助けられると、借り作った気になる」
「返さなきゃって?」
「そう」
「重いな」
「重い」
蓮司は即答した。
「助けは、取引じゃない」
「でも」
「そう思わされてきた場所にいた」
相談者は黙る。
「だから」
蓮司は静かに言う。
「助けを拒む癖がついた」
「癖」
「性格じゃない」
相談者は深く息を吐いた。
「じゃあ俺」
「うん」
「悪くない?」
「悪くない」
「めんどくさいだけ?」
「慎重」
相談者は立ち上がる。
「ここでは?」
「うん」
「助け、受け取っていい?」
「量は選べ」
「今日は?」
「一言分」
相談者は少し考えてから言った。
「……ありがとう」
「どういたしまして」
それだけで、少し空気が軽くなった。
助けを拒む人は、弱いんじゃない。
助けが続かなかった経験を、
ちゃんと覚えてるだけだ。