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3月14日。朝から大地は落ち着かなかった。
「はぁ〜、今日は運命の日だな。隼人、俺にどんなお返ししてくれるんだろ……」
「別にやらねぇって言っただろ」
「嘘だ! 隼人はそう言って必ず俺を驚かせるタイプ!」
「どんなタイプだよ」
周囲のクラスメイトは「また始まった」と苦笑しつつ、大地の浮かれっぷりを見守っていた。
放課後。人気のない屋上に呼び出された大地。
「ついに来たか!」と胸を張って隼人の前に立つ。
隼人は無言で紙袋を差し出した。
「……ほら、これ」
「うおぉ! 来たぁぁぁ!!」
大地は袋を覗き込み、首をかしげた。
「……え? マシュマロ?」
「嫌なら返せ」
「いやいやいや! これは……! つまり“お前のことが嫌い”って意味のマシュマロじゃ!?」
「そういう都市伝説信じてんのかよ」
「じゃあどういう意味!? 教えて隼人先生!」
隼人はわずかに顔を赤くしながら、もうひとつの小さな箱を取り出した。
「……ほんとのお返しは、こっちだ」
「……!」
大地が息を呑む。箱の中にはシンプルなシルバーのネックレス。
先端には小さなプレートがあり、そこには彫られていた。
《Daichi♡Hayato》
「は、隼人……これ……」
「……お前、安っぽい指輪渡してきただろ。だから……ちゃんとしたの、選んでやった」
「…………っ!」
大地は涙目になりながら首にかけ、ぎゅっと握った。
「うぉぉぉぉ! やっぱり隼人は最高だぁぁぁぁ!!」
「叫ぶな! 響く!」
「これもう結婚証明書みたいなもんじゃん!」
「違う!」
大地はそのまま勢いよく隼人に飛びついた。
「ありがとう隼人! これ一生大事にする! 俺、首がもげても絶対外さない!」
「やめろ! 洒落にならねぇ!」
笑い声と喧騒が夕焼けの屋上に響く。
そしてネックレスのプレートは、沈みかけの陽光を反射してきらりと輝いていた。