テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

放課後の廊下はオレンジ色で、窓際に積もったプリントが風でめくれていた。相談室のドアが、軽く二回ノックされる。


「……入れ」


扉を開けたのは、同じ学年の女子だった。

髪を下ろしたまま、目元に疲れを溜めている。


「……ごめん、突然」


「別に。座れよ」


彼女は椅子に腰を下ろし、膝の上で手を組んだ。

しばらく視線を落としたまま、やっと口を開く。


「最近、友達と話してても……なんか置いてかれる感じがして。

笑ってる話題についていけないと、すぐ“つまんない子”みたいになっちゃう」


「おまえがつまんないわけじゃないだろ」


「でも……みんなのスピードに合わせられないと、距離できるじゃん。

私、もっと頑張らなきゃって思うけど……疲れるだけで」


日下部は机に肘をつき、彼女の言葉を待った。


「……なんで、合わせるだけでこんなにしんどいんだろ」


「走ってるやつの速さに無理やり合わせたら、息切れするのは当たり前だ」


「でも、止まったら……」


「止まったら、止まったやつの隣にいるやつも見える」


彼女は少し目を見開いた。

窓の外、夕日の中を鳥がゆっくり横切る。


「……そんな人、いるのかな」


「探せばな。少なくとも、合わせなきゃ繋がれない相手よりはマシだ」


短く息を吐いた彼女は、立ち上がるときに小さく笑った。


「……ありがと。少し楽になった」


「おう」


ドアが閉まる音のあと、日下部は机に頬杖をつき、外の空をぼんやりと見つめた。

自分にも、同じように探してほしい誰かがいることを、口には出さなかった。



この作品はいかがでしたか?

17

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚