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ruruha
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#一次創作
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放課後。
空き教室。
日下部は机に置いたシャーペンを転がしていた。
ドアが開く。
「お疲れ」
「お疲れ」
相談者が入ってくる。
「課題ですか」
「現実逃避」
「今日は何分目ですか」
「十分くらい」
相談者が笑って席に座る。
「今日は?」
相談者は少し黙る。
それから静かに話し始めた。
「俺、人の機嫌ばっかり気にしちゃうんです」
日下部は目を向ける。
「友達がちょっと静かだったり、返事が短かったり、いつもと違うだけで」
少し間。
「『俺、何かしたかな』って考え始めます」
教室が静かになる。
「聞く?」
「聞けないです」
「何で」
「もし俺が原因だったら怖いからです」
日下部は頷く。
「で」
相談者は苦笑する。
「勝手に落ち込んで、勝手に距離置いて、あとで普通に話しかけられて」
少し笑う。
「何だったんだろうって」
日下部も少し笑った。
「あるな」
短く言う。
「お前さ」
少し間。
「人の機嫌って誰のものだと思う」
相談者は止まる。
「え」
「その友達、朝、家で親とケンカしたかもしれない。テストの点悪かったかもしれない。眠いだけかもしれない」
短く言う。
「理由はいくらでもある」
相談者は黙る。
「でも俺、最初に自分を疑います」
「癖なんだろうな」
日下部は言う。
「人の機嫌が悪い」
少し間。
「イコール俺のせい。そこがもう飛躍してる」
相談者は視線を落とした。
「確かに」
「もちろん」
日下部は続ける。
「自分が原因の時もある」
相談者は頷く。
「でも、全部じゃない」
教室に静かな時間が流れる。
「俺」
少し考える。
「人の機嫌を直そうともしてました」
日下部は苦笑する。
「大変だな」
「笑わせようとか、話しかけようとか、気まずくならないようにとか」
「疲れるだろ」
「疲れます」
日下部は頷いた。
「人の機嫌は」
少し間。
「その人の仕事だ」
相談者は顔を上げる。
「仕事?」
「助けることはできる。でも」
短く言う。
「責任までは持てない」
相談者は黙る。
窓の外から部活帰りの声が聞こえる。
「俺」
少し笑う。
「勝手に担当者になってました」
「いつ就職した」
相談者は吹き出した。
「覚えてないです」
「退職しろ」
二人とも笑う。
立ち上がる。
「何か」
少し考える。
「全部自分で何とかしようとしてました」
「全部は無理」
日下部は言う。
「だから疲れる」
相談者は小さく頷いた。
「少し肩の力抜いてみます」
ドアが閉まる。
人の機嫌を気にするのは、相手を大切に思っているからでもある。
でも、誰かの感情まで背負い続ける必要はない。
その機嫌は、本来その人自身が持つものなのだから。
コメント
1件
読了しました……。この話、すごく沁みました。 「人の機嫌はその人の仕事」っていう日下部くんの言葉、胸に刺さる。勝手に担当者になって、全部自分で何とかしようとして疲れるの、わかるなあ。でも、全部は無理なんだよね。 最後の「その機嫌は、本来その人自身が持つもの」って一文で、ほっとした。人の感情を背負わなくていいんだって、ちゃんと許してもらえた気がした。ruruhaさんの優しい視点が感じられる回でした🌙