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銀色の雪が舞い落ちる浜辺で

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銀色の雪が舞い落ちる浜辺で

第58話 - 第57話

623

2025年02月24日

#大人の恋愛

#大人ロマンス

#ハッピーエンド

#イケメン

#オフィスラブ

#恋愛

瑠璃マリコ

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瑠璃マリコ

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そして午後、秘書室では三人がそれぞれの仕事をしていた。

その時、恵子が呟く。

「あれぇ？　おかしいな～。なんか資料を見ようと思ったらログイン出来ないんですけど～？」

「え？　どれどれ？」

さおりは立ち上がると恵子の傍へ行きパソコンを覗き込む。

奈緒も気になったので二人の傍に行った。

「あーっ、またこれかぁ！　なんかさー、これちょっと厄介でさぁ、ログインしたあとちゃんとログアウトしないと、次の人がログイン出来なくなっちゃうんだよねー。誰だぁ？　ログアウトしないまま閉じたのは―？」

「えっ？　じゃあこの資料見られないんですか？　今すぐ必要なのに……」

「うーん、これを解除するには技術部の人に頼まなくちゃなんだよねー」

「うわぁ面倒臭い！　じゃあ技術部の人を呼ばなくちゃ……」

その時ノックの音が響いた。奈緒が返事をすると省吾が入って来た。

「奈緒、これも一緒に入力も頼む……ん？　どうした？　何かトラブルか？」

三人が深刻な表情で集まっているのを見て、省吾が聞いた。

すると恵子がぼやく。

「この資料を見ようと思ったら、ロックがかかっててログイン出来ないんです」

省吾はすぐに恵子の傍まで行きパソコンを覗き込む。

「あぁ、これかぁ……直しとけって言ったのにまだ直してないのか……」

「解除は技術部の人じゃないと無理ですよね？」

「俺も出来るよ」

「えっ？　深山さんが直せるんですか？」

途端に恵子の顔がパァッと明るくなる。

その時、さおりが省吾の足を思い切り蹴った。

「イテッ！」

その声に奈緒と恵子が驚く。しかしすぐにさおりが笑顔を浮かべながらこう言った。

「深山さんには直せないと思うなぁ。前に頼んだ時駄目でしたよね？」

さおりの顔は笑っていたが、目だけは笑わずに省吾を睨んでいる。

「え？　あ？　そうだったっけ？」

「そうよー、やだぁ、忘れちゃったのー？　ホホホ……」

そこでさおりは今度は奈緒に向かって言う。

「奈緒ちゃん、技術部の人を呼んでもらってもいい？」

さおりが奈緒だけにわかるようにウインクをしたので、奈緒は気付いた。

これは先日カフェでさおりと打ち合わせをした際の、作戦第一号だという事に。

「えっと……じゃあ技術部へ連絡しまーす」

奈緒は若干棒読み気味に言ってから、技術部へ電話をかけた。

「はい、技術部の井上です」

（ちょうど井上さんが出た！）

奈緒はつい嬉しくて声が弾みかけたが、慌てて平静を装う。

「井上さんですか？　秘書室の麻生です。お忙しいところ大変申し訳ないのですが、ファイルを開く際にロックがかかっていて開けないんですよ。すみませんがもしお手すきでしたら解除していただけないでしょうか？」

「いいですよ、今行きます」

「ありがとうございます。お願いします」

奈緒が受話器を置いてさおりに目で合図をすると、さおりはにっこりと微笑む。

「わざわざ呼ばなくても、俺が直せるのに……」

省吾がブツブツと呟いたので再びさおりが睨む。

そしてさおりは入口の脇に積んである段ボール箱を指差しながら言った。

「奈緒ちゃん！　そこに積んである備品って深山さんに頼まれたやつだよね？　今ちょうど深山さんがいるから一緒に運んでもらったら？」

さおりは奈緒にもう一度ウインクをする。

「あ、はい。じゃあ深山さん、一つお願い出来ますか？」

「うん、いいよ」

省吾はなんだか納得がいかないという表情のまま、大きい段ボールを抱えて秘書室を出た。

その後を小さい段ボールを持って奈緒がついて行く。

CEO室へ入るとすぐに省吾が言った。

「一体なんなんだ？　さおりさんは！」

奈緒はフフッと笑った後、省吾に説明した。

「さおりさんはね、今愛のキューピッドをしているんです」

「愛のキューピッド？　なんだそれ？」

「実は井上さんは恵子さんの事が好きなんです。それでさおりさんは愛のキューピッドとして井上さんを呼ぼうと思ったんですよ。でももしあそこで深山さんが直してしまったら井上さんを呼べないでしょう？　だから追い出されたんです」

奈緒は言い終えるとクスクスと笑う。

そこで省吾はやっと状況が理解出来たようだ。

「なんだそういう事か～！　ったく、さおり姉はいつも言葉足らずでわかり辛いんだよなぁ……」

省吾は無意識に『さおり姉』と言ってしまいハッとする。

そこで奈緒は再びクスクスと笑う。

「お二人が従兄弟だっていうのはもう知っていますから、ご安心を」

「え？　知ってたの？」

「はい。秘書室内だけの機密事項として」

「ハァッ？　俺には黙ってろって言ってたくせに自分だけちゃっかり」

そこでとうとうこらえきれずに奈緒が笑い出したので省吾も釣られて笑う。

「まあ、そういう事なら……二人上手くいくといいな」

「はい」

奈緒はニッコリと微笑んだ。