テラーノベル
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「ほら」
肩を掴まれ、遥は無理やり立たされた。
「次、やろうぜ」
「……何を」
「分かんない?」
返事を待たず、身体を押される。
遥が一歩よろけたところで、拳が飛んできた。
反射的に目を閉じる。
身体が大きく揺れて、足元がふらついた。
「ほら、立てよ」
誰かが笑う。
遥は机に手をついて、どうにか身体を起こした。
「一発で終わり?」
「つまんねぇ」
また肩を掴まれる。
逃げようとしたわけではない。ただ、身体が勝手に後ろへ下がった。
それを見て、相手が笑った。
「逃げんなよ」
「……逃げてない」
「じゃあちゃんと立ってろ」
次が来る。
遥は腕を上げて顔を庇った。
「それじゃ当てにくいだろ」
腕を払われる。
周りから笑い声が上がった。
「こいつ本当に何も言わないな」
「やめてって言わねぇの?」
「言ったら?」
遥は黙った。
「言ったらどうすんの?」
答えられない。
どうせ、もっと面倒になる。
だから黙っている。
それを見て、また笑われる。
「ほらな」
「こいつ、こういう役だろ」
「殴られても黙ってるやつ」
その言葉が、一番嫌だった。
自分が何をされても耐えることまで、いつの間にか周りには当然になっている。
遥は俯いたまま、次が来るのを待った。
誰も止めない。
教室の隅では、何人かがこちらを見ている。
けれど、目が合うとすぐに逸らされた。
助ける気はない。
ただ、面白がって見ているだけだった。
「まだ授業まで時間あるな」
「じゃあ、もうちょいやる?」
笑い声が重なる。
遥は唇を噛んだ。
早く終わればいい。
そう思いながら、また顔を上げる。
逃げることも、助けを求めることもできないまま、次に来るものを黙って受けるしかなかった。
コメント
3件
😭
読ませていただきました……。この一話は、本当に胸が締め付けられました。暴力そのものよりも、「殴られても黙ってるやつ」というレッテルを貼られることの方が遥くんにとっては一番辛いんだろうな、と。周りが助けずにただ眺めているだけの空気も、読んでいて苦しかったです。ruruhaさんが描く沈黙の重さと、無理やり立たされる身体の動きが、とてもリアルでした。続きが気になります……。