テラーノベル
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そのころ、紗英は気乗りしない駿介を半ば強引に外へ連れ出していた。
以前から気になっていたカフェで、ブランチを楽しんでいる。
「うわぁ、ふわふわのパンケーキ、美味しそう♡ ねえ、見て見て! 駿介さん!」
「ああ……」
気のない返事に、紗英はむっとしながら心の中でつぶやく。
(最近ずっとこんな感じ……何かあったの?)
付き合い始めのころは常に優しく、紗英を第一に気遣ってくれていた。それなのに、数か月でこの変わりよう。さすがの紗英でも納得がいかない。
「ねえ、どうしたの? 最近変よ。そういえば上司に呼び出されたって聞いたけど、そのとき何かあったの?」
触れられたくないところを突かれ、駿介はむっと黙り込む。
実は先日、今月二度目の呼び出しを受けたばかりだった。
トレード成績はさらに低迷し、上司から厳しく叱責されたのだ。
(このままじゃ部署異動だ……。こんなはずじゃなかったのに)
駿介が仕事に集中できない原因は、先日の夏帆との出来事だった。
寄りを戻すと言えば喜ぶと思い込んでいたのに、まさかの拒絶。
さらに天敵の透也が口を挟み、結果として駿介が負けた形になり、プライドはズタズタだった。
成功している透也に勝てるはずもない――それが分かっているだけに、駿介の苛立ちは募るばかりだった。
黙り込む駿介を見て、紗英は大きくため息をついたあと、突然こんなことを尋ねた。
「そういえば、藤田さんって、今ごろどうしてるのかな?」
突然の夏帆の名前に、駿介は驚く。
「ど、どうしてるって……急になんだよ」
「再就職先よ。もう決まったのかな?」
「そんなの、分かるわけないだろ」
駿介は不機嫌そうに返した。
「次も金融系なのかしら?」
「だから、知らないって言ってるだろ」
「そうよね。駿介さん、もう彼女とは交流がないんだから……」
その言葉に、駿介はドキッとした。
その表情に気づいた紗英は、目を見開いて言う。
「あっ! 何か隠してるでしょ!」
「か……隠してないよ」
「嘘! 絶対何か知ってる! 教えてよ!」
「だから、何をだよ」
「藤田さんのことよ!」
あまりの勢いに、駿介は思わず身を引いた。
「知ってどうするんだよ」
「あら。私が愛してる人の元カノなのよ? 気になるのは当たり前じゃない」
「もう終わったことだ。関係ないだろ! それに、今さら聞いてどうしようっていうんだ」
「何もしないわよ。ただ、知りたいだけ。女ってそういう生き物なんだから」
紗英が必死に食い下がるので、駿介はうんざりする。
しかし次の瞬間、ある考えが浮かんだ。
(そうだ……。夏帆が中条と付き合ってるって言えば、プライドの高い紗英のことだ。勝手に二人の仲を壊してくれるかもしれない……。あいつ、雑誌に載った中条を見てうっとりしてたもんな……)
我ながらいい案だと駿介は思った。
そして、しらじらしくこう口にした。
「じゃあ教えるけど……前に雑誌に載ってた中条透也ってトレーダー、覚えてる?」
突然の話題に、紗英はきょとんとした表情を浮かべた。
「もちろん覚えてるわよ。超イケメンのハイスペ億万長者の彼よね?」
「そう……。実は夏帆、今、あいつと付き合ってるらしいんだ」
「えっ?」
紅茶を飲もうとしていた紗英の手が止まった。
かなり驚いているらしい。
「嘘!」
「嘘じゃないよ。夏帆と親しかった同僚に聞いたんだ」
「本当に?」
「ああ。新しい仕事が決まったかどうかは分からないけど、新しい男ができたのは確実みたいだな」
「……」
紗英は急に黙り込んだ。
(なんですって! 私がマウントで勝ったと思ってた相手が、駿介さん以上の超ハイスペ男子を捕まえた? それも億万長者よ! そんな男性と付き合ってるって……はあっ? そんなの絶対許せない!)
紗英の心の中は、どろどろとした黒い感情で満たされていく。
その現実は、彼女にとって到底受け入れられないものだった。
「驚いただろ?」
「……別に」
「ちなみに、あの中条ってやつ、“門前仲町”駅近くのマンションに住んでるんだって。あんなに金持ちなのに、相当古いマンションで暮らしてるらしいぞ。そこで夏帆と一緒に住んでるのかな?」
「門前仲町? ずいぶん下町じゃない」
「ああ。噂では都内にタワマンやビルを数えきれないほど所有してるらしいのに、あえて古いマンションに住んでるなんて……変わってるよな」
(タワマンやビルをいくつも? 信じられない! そんな人とあの女がどうして……)
呆然とする紗英を見て、駿介はこの作戦がうまくいくと確信した。
紗英に対して未練などひとつもない。
彼女に二人の仲を壊してもらい、駿介は再び夏帆を手に入れようと企んでいた。
そこで駿介は、しらじらしく尋ねた。
「なあ、このあとどうする? うちに来る?」
紗英は本来、駿介のマンションで練習したビーフシチューを作る予定だった。
しかし、今の話を聞いて、そんなことはどうでもよくなっていた。
紗英は携帯を取り出し、メッセージを見るふりをすると、急に甘えた声で言った。
「ごめんなさ~い。今ママからメッセージが来て、ちょっと体調が悪いみたいなの。だから今日は帰ってもいい?」
予想通りの反応に、駿介は笑いを隠せない。
「そっか。だったら早く帰ってあげないとな」
「本当にごめんなさい。この埋め合わせは、また来週にでも」
「ああ。楽しみに待ってるよ」
「じゃあ、またね!」
「気をつけて!」
紗英は残念そうに微笑むと、急いで出口へ向かった。
その後ろ姿を見つめながら、駿介はぼそりと毒づく。
「あいつ、絶対割り勘で払わねーな」
ため息をひとつつくと、駿介は食べかけのパンケーキを残したまま、会計へ向かった。
コメント
17件
全て人のせい。隣の芝生は…よね😅😅 バカップルの脳みそやられてますよ😩😩自分がだめなんだから、ズタズタに透也さんが打ちのめされて!!🤣ちと、足らない人ほど欲が深いのよ。愛ではなく、相手の外観やら見栄えやら金にね😮💨😮💨自分で努力すら、ないないやる気ないからねー。人にやってもらうのが間違い😩
私この二人の会話、結構好きだったりするꉂꉂ(๑˃∀˂๑)アハハハ 似た者同士、まぁ頑張りなさい。 どう足掻いても無駄だからw
なんか最早この2人に笑けてきました🤣 どう足掻いても無理やのにーー🤣 紗英。早速マンションへいくんかな… 玉砕する光景が見える( ≖ᴗ≖)フッフッフッ
ruruha
1,089
#狂愛
柏木さくら
4,367
#ロマンスファンタジー
Jasmine
987
桃下結衣
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