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「最近、みんなといてもなんか楽しくない」
放課後、空き教室。
椅子を後ろ向きに座ったその子は、手元でカフェドリンクのストローを回していた。
「仲悪くなったわけじゃないんだけど……笑いのツボとか、話題とか、ズレてきた感じ」
「よくあるやつだな」
蓮司は机の端に腰を乗せ、片手でスマホをいじりながら答える。
「前は同じことで盛り上がってたのに、最近は私だけ置いてかれてるみたいで……」
「無理に合わせてんの?」
「……うん。合わせないと“なんか冷めてない?”って言われるし」
「で、合わせてんのに楽しくねぇんだろ」
「そう。で、帰ってからめちゃくちゃ疲れる」
蓮司は小さく笑う。
「だったら、合わせるのやめりゃいいじゃん」
「え? でも、それで浮いたら……」
「浮くのが怖くて、自分削ってんのか。
そんなの、もうグループにいる意味ねぇじゃん」
「……でも、友達いなくなるのも嫌だし」
「本当に友達なら、お前がちょっとズレても残るだろ。
そうじゃないなら、それは“グループ”じゃなくて“群れ”」
沈黙。
ストローを回す音だけが響く。
「……群れ、か」
「群れは形が崩れると終わる。でも、友達は形変わっても残る。
どっちを選ぶかはお前次第」
その子はストローをいじる手を止め、ため息をつく。
「……でも、やっぱり浮くの怖いよ」
蓮司はスマホをポケットに突っ込み、机に両手をついた。
「怖いのは、“浮くこと”じゃなくて、“自分がいないと成り立たない場所を見つけられてない”ことだろ」
「……」
「群れの中で消耗してる間に、自分に合う場所、逃してんだよ。
合わないやつらといる時間って、着ぐるみ着て走ってるみたいなもんだぞ。息苦しいだけ」
彼は軽く肩をすくめて、言葉を足す。
「まぁ、俺ならそんな群れとっとと捨てるけどな。
だって、そこにいる自分より、一人で笑える自分の方が絶対マシじゃん」
沈黙。
その子は小さくうなずく。
「……たしかに、最近、自分で笑ったことなかった」
「ほらな。じゃあもう答え出てんじゃん」