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高校二年・Nさん
友達に嫌なことを言われても、その場ではあまり言い返せません。
この前も、みんなで話している時に、私の失敗を笑われました。
その時は「まあ、いいけど」って笑いました。
別に、その場では本当にそこまで気にしてなかったんです。
でも、家に帰ってから思い出して。
「あれ、普通に嫌だったな」って思いました。
次の日も思い出して、また腹が立って。
「なんであの時、何も言わなかったんだろう」って、自分にも腹が立ちました。
それで、友達に会うと普通に話せるんですけど、心の中ではずっと引っかかっています。
でも、今さら「あの時のこと嫌だった」って言うのも変ですよね。
遥「その場では、本当に気にしてなかったと思ってたんだ」
N「はい。あとから急に嫌になりました」
蓮司「その場で笑ったから、自分でも『私は平気だった』ってことにしてた?」
N「……そうかもしれません」
日下部「その時は、笑って流す方が楽だった?」
N「はい。空気を止めたくなかったし、そこで『嫌だった』って言ったら、みんな困るかなって」
遥「だから、その場では終わったことにした」
N「はい」
遥「でも、家に帰って一人になったら、ちゃんと嫌だったことが出てきた」
N「……そうです」
蓮司「それ、あとから怒ったんじゃなくて、その場では置いておいた感情を、あとで拾っただけじゃない?」
N「……。そう言われると、そんな感じです」
日下部「その場で反応できなかったからって、嫌じゃなかったことにはならない」
N「でも、笑ったんです」
蓮司「笑った=許した、じゃないだろ」
N「……」
蓮司「笑うしかない時だってある。場の流れで笑うこともある。だから、その時笑ったことだけで、自分の気持ちを決めなくていい」
N「……」
遥「むしろ、あとから嫌だったって気づいたなら、それはそれでいいと思う」
N「でも、時間が経ってます」
遥「どのくらい?」
N「三日です」
蓮司「三日なら別に遅すぎるってほどでもないだろ」
N「でも、『今さら?』って思われそうで」
日下部「Nは、嫌だったことを伝えるには、その場で言わないといけないと思ってる?」
N「……はい」
日下部「じゃあ、後から気づいた人は、ずっと我慢するしかなくなる」
N「……」
遥「それは変だと思う。その時は分からなかったけど、あとで『やっぱり嫌だった』って分かることもある」
N「……ありますよね」
遥「ある」
蓮司「ただ、今さら言うのが面倒なのも分かる」
N「そうなんです。今から言ったら、私がずっと根に持ってるみたいで」
蓮司「実際、三日間覚えてたんだから、多少は引っかかってるんだろ」
N「……」
蓮司「でも、『根に持ってる』と『傷ついたことを伝える』は別」
N「……」
日下部「言わないという選択もある」
N「え?」
日下部「必ず伝えなきゃいけないわけじゃない。ただ、言わないことと、『自分が気にしすぎだから忘れなきゃ』は別だと思う」
N「……あ」
遥「そこ、大事かも。Nは今、友達に言うか言わないかより先に 自分が嫌だったって思ったことを、なかったことにしようとしてる」
N「……。確かに」
蓮司「言わないなら言わないでいい。でも、『私は嫌だった』くらいは自分の中で認めとけば?」
N「……それだけでもいいんですか?」
蓮司「いいだろ」
N「でも、そうするとずっと気にしそうで」
日下部「逆かもしれない」
N「?」
日下部「嫌だったことを『気にしちゃ駄目』って押さえるから、何度も思い出すこともある」
N「……」
日下部「『あれは嫌だった』って一回認めた方が、そこで止まることもある」
N「……そうなんですかね」
遥「俺も、後から思い出して『やっぱり嫌だった』ってなることある」
N「遥くんも?」
遥「うん。その時は何とも思わなかったのに、家に帰ってから急に腹立つとか」
N「あります」
遥「だから、後から気づいた自分を責めなくていいと思う」
N「……。私、昨日からずっと『なんであの時言えなかったんだろう』って考えてました」
蓮司「それはそれで、自分に後から文句言ってるな」
N「……はい」
蓮司「友達に言えなかった分、自分に言ってる」
N「……。それ、すごく嫌です」
日下部「だったら、まず自分への責める言葉を止めた方がいい」
N「でも、言い返せなかったのは私なので」
遥「言い返せなかったことと、嫌だったことは別。その時できなかったからって、今の自分まで責めなくていい」
N「……」
遥「その場では笑った。あとで嫌だったと気づいた。今さら言うかどうか迷ってる。今は、それだけだろ」
N「……はい」
蓮司「もし言うなら、別に大げさに話さなくてもいい」
N「なんて言えばいいですか?」
蓮司「『この前のこと、あとからちょっと嫌だったんだよね』くらいでいいんじゃない」
N「……軽いですね」
蓮司「重くする必要ある? 相手がどう受け取るかは知らないけど、Nが感じたことを伝えるだけなら、それでいいだろ」
日下部「逆に、言わないなら『今回は流す』と自分で決めてもいい」
N「……」
日下部「大事なのは、『私は嫌じゃなかった』と無理に決めないことだと思う」
N「……分かりました。嫌だったけど、今回は言わない。そういう決め方でもいいんですね」
遥「うん」
N「なんか、今まで『その場で怒れなかった自分が悪い』と思ってました。だから、あとから怒るのも駄目だって」
遥「怒るタイミングまで正解を決めなくていいよ」
N「……」
蓮司「その場で言えなかったなら、あとで言ってもいい。言わないなら、それでもいい。ただ、自分の気持ちまで嘘にする必要はない」
N「……はい」
日下部「『嫌だった』と認めるだけで、すぐ誰かを責めることになるわけじゃないから」
N「……。じゃあ今日は、ちゃんと『嫌だった』って思っておきます」
遥「それでいいと思う」
N「まだちょっと腹立つけど」
蓮司「それも別にいいだろ」
N「……ふふ」
🗝 三人からのことば
遥
「その場で言えなかったからって、嫌じゃなかったことにはならない。あとから気づいた気持ちも、自分の気持ちとして認めていい」
蓮司
「笑ったから許した、ではない。言うなら後からでもいいし、言わないならそれでもいい。自分の気持ちまで嘘にする必要はない」
日下部
「嫌だったと認めることと、相手を責めることは別。まず自分がどう感じたのか、それだけ分かっていればいい」
コメント
1件
うわー、これめっちゃ分かるわ…!読み終わった後ジワジワ来た。 「笑った=許したじゃない」は確かにそうで、自分も同じ経験あるから刺さったわ。その場で処理できなくても、あとから気づいた自分の気持ちを無視しなくていいんだって、なんか救われる。 「言わない選択もある」って日下部の台詞も良かった。遠回しに否定されるより、ちゃんと認めてもらえる方が落ち着くってあるよな。 ruruhaさんのこういう相談系、対話が自然でグッと来るわ。次も楽しみにしてます🔥
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