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恋愛小説家の恋

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恋愛小説家の恋

第74話 - 第74話

159

2024年08月23日

#恋愛

#大人の恋愛

#イケメン

#大人ロマンス

#第3回テノコン

#ハッピーエンド

瑠璃マリコ

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瑠璃マリコ

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二人の様子を少し離れた所から見ていた英人は顔が綻んでいた。

健吾はいっときとして理紗子から視線を外さない。健吾があんなに大切そうに女性をエスコートしているのを見たのは初めてだ。

今までの健吾はどちらかというと女性に対し少し冷めていた。決して自分からは追いかけない健吾が付き合う相手は常に向こうからアタックしてくる女ばかりだ。だからいつも一人の女と長く続いたためしがない。

しかし今ここにいる健吾はまるで別人だ。どう見ても健吾が理紗子を追いかけているのは明らかだった。その事に理紗子が全く気付いていないのがまた面白い。

思わず英人はククッと笑う。そこで妻の唯が聞いた。

「どうしたの？」

「うん、健吾がさ、すっかり変わったなって思ってさ」

「フフッ、ほんとあの二人お似合いだわ」

「俺もそう思う」

その瞬間英人と唯は目を見合わせてフフッと笑った。

その頃健吾と理紗子は美味しい寿司を堪能した後、今度はテーブルのビュッフェで料理を選んでいた。いくつかの料理を取り分けるとワインと共にバルコニーのテーブルへ向かう。

外には角部屋の利点を生かしたL字型の広いルーフバルコニーがあった。

夜空には満月に近い明るい月が出ている。

二人は人気のない一番左のテーブルへ向かい合って座ると海風を感じながらワインと料理を楽しんだ。

「今夜は任務遂行の為に飲み過ぎないように気をつけるから」

理紗子が自慢気に言ったのを聞いて健吾が茶化す。

「それは良い心がけだ。俺以外の男にお持ち帰りされるとかはやめてくれよ。君はあくまで俺の恋人として来ているんだから」

「フンッ、そんなヘマはしないわ」

理紗子がムッとしたので健吾は声を出して笑った。

少し湿った海風が理紗子の髪を揺らす。その柔らかな髪がなびく様子を見て自分はこのシーンをイメージしていたのだと健吾は悟る。

上品かつセクシーなワンピースを身に纏い夜風に髪を揺らす理紗子は最高にイイ女だった。

その時健吾の鼻に甘くセクシーなローズの香りが漂ってきた。一瞬くらりとしながら健吾はそれとなく理紗子の顔を盗み見る。

いつもよりも大人びたメイク、プルンと潤う唇、そして滑らかな肌。

それを見た瞬間健吾の心はすっかり奪われていた。

一方、理紗子は少し興奮気味だった。

こういったパーティーには今まで参加した事がない。本物の富裕層たちが集うレアなパーティーだ。

こんな世界が実際にあるとは思わなかったしそれを今自分が体験している事が信じられなかった。

まさに小説や映画の世界だ。

この経験は小説を書く上での貴重な体験になる……理紗子はそう思った。

それから二人が食事を楽しみながら他愛もない話をしていると英人と唯が料理とワインを手にしてやって来た。

英人は茶化すように健吾に言った。

「いい感じの所を邪魔して悪かったな」

「ああ、邪魔だ邪魔だこっち来んなっ」

その言葉に理紗子と唯は声を出して笑った。

そこからは四人での楽しい会話が弾む。

健吾は早速理紗子が釣ったGTの写真を二人に見せる。

「ビギナーズラックにしてはデカすぎるなー」

「理紗子んさん凄い」

二人はかなり驚いている。

理紗子が三浦半島での釣りにも参加すると知ると唯が喜んだ。

意外な事に釣りには毎回唯も参加しているようだ。

日焼けとは無縁の真っ白な肌が美しい唯が釣り船に乗って釣りをしていると聞き理紗子は驚く。

唯の方は「今度一緒に行けるのねー」ととても嬉しそうだった。

そこから女性二人は理紗子の小説や映画の話へと移行していった。

意気投合している二人を置いて、男性二人はリビングで始まっていた樋口の若手に向けた投資講座に参加する事にした。

投資を始めて間もない若者たちが真剣に樋口の話に聞き入っている。樋口の言葉を一言も逃さないようにメモを取っている者もいた。

自分達も若い頃は必死でこんな感じだったよなーと英人が懐かしそうに健吾に言った。その言葉に健吾は大きく頷く。

投資家として成功する前から二人は共に励まし合い時には叱咤激励しながら厳しい局面を乗り越えてきた。健吾はそんな時代を懐かしく思い返す。

その時樋口が若者からの質問を突然健吾に振って来た。いきなり答えろと言われた健吾は自分が知り得る限りの知識と経験から基づくアドバイスを丁寧に説明する。

若手投資家の中には健吾や英人を崇拝している者も多い。質問をした若者も健吾のファンだったようで健吾のアドバイスが終わると感動のあまり真っ赤な顔をして健吾に礼を言った。

樋口家のパーティーはこうして世代を超えてコミュニケーションを取りながら投資家同士の交流を深めていく場となっていた。