テラーノベル
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一人ずつ、順番に舞台へと送り出す。
最初はただ、光の届く場所に立たせるだけだった。
誰も彼も、初めは戸惑う。自分が演じていることにすら気づかない。
やがて彼らは気づく。自分の足元が、誰かの叫びの上に築かれていると。
それでも止まらない。
舞台は回り続ける。
“遥”という役には、とりわけ多くの仕掛けを施した。
それは彼の強さへの、あるいは弱さへの、興味からだ。
どこまで壊れるのか。
どこまで、立ったままでいられるのか。
「愛されるとは、こういうことだ」
「守られる者は、選ばれし存在だ」
そう囁きながら、彼の輪郭を削っていく。
誰も気づかないまま、彼は透明になる。
透明になった彼を、皆が責める。
見えないくせに、そこにいるから。
私は記録する。
喜劇のふりをした、完璧な破滅のシーンを。
誰のためでもない。
ただ、美しいからだ。