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銀色の雪が舞い落ちる浜辺で

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銀色の雪が舞い落ちる浜辺で

第55話 - 第54話

558

2025年02月23日

#大人の恋愛

#大人ロマンス

#ハッピーエンド

#イケメン

#オフィスラブ

#恋愛

瑠璃マリコ

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瑠璃マリコ

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それから三週間が過ぎた。

大豊建設の無人AI重機プロジェクトの件は、機転の利いた井上の対応により難を逃れた。

井上が密かに作っていた修正プログラムは、既存のものを更に強固なシステムへと変える素晴らしいシステムだった。

これでITC建機の誤作動の問題は全て解消された。

口うるさい事で有名な大豊建設の担当者も、井上の仕事ぶりにすっかり大満足し、今後は井上が大豊建設の担当となった。

あの日突然会社を休んだ三上は、その翌日も出社しなかった。

そして騒動があった二日後、三上からの退職届が人事部に届く。

やはり噂通り、三上はサイバーソフトリンクへ引き抜かれたのだろう。

課長の本田やプロジェクトチームの仲間が三上に電話をかけてみたが、電話は既に解約されていて繋がらなかった。

その後、社内は三上の噂で持ちきりになる。

三上のファンだった女子社員達は、かなりショックを受けているようだ。

一方、男性社員達はどことなくホッとしているようだった。

特に技術系社員の間では、三上がいなくなった事でフロアの雰囲気が良くなったように感じていた。

今まではなかなか声を上げる事の出来なかった若手社員達が、どこか伸び伸びとしている。

技術部内においては、以前よりも確実に社員同士のコミュニケーションが活発になっていた。

そこで社員達はなんとなく気付いてしまった。有能だと思っていた三上が、実はそれほどでもなかったという事に。

三上がデキる人間に見えていたのは、周りの人間のサポートのお陰だったのだ。

三上はこれまで面倒で地味な仕事は全て後輩に押し付け、注目を浴びるような目立つ仕事だけを選んでやっていただけだったのだ。

「そんなんでサイバーソフトリンクに行って大丈夫なのか？　すぐに化けの皮が剥がれるぞ？」

技術部の社員達は口を揃えて言う。

一方、省吾や公平達役員は、三上の本格的な調査に乗り出していた。

もし三上が CyberSpace の機密事項をサイバーソフトリンクへ漏洩していたら、法的な措置を取るつもりで準備している。

その為に既に調査が始まっていた。

IT系の技術者が引き抜かれる場合、大抵は移った先に有利な情報を手土産にしている場合が多い。

どんな小さな漏洩でも省吾達は決して見逃すつもりはなかった。

公平はそういった訴訟問題を得意としているので、腕を鳴らして調査結果を待っている。

そんな中、名取美沙が六月付けで会社を退職した。

東京のはずれにあるデータセンターへの異動を受け入れられなかった美沙は、あっさりと退職の道を選んだ。

美沙が三上と同時期に辞めた事で、二人に対する疑惑も深まる。

二人はもしかしたら通じていたのかもしれないという憶測が広まったが、今となってはその真偽のほどは定かではなかった。

そんな騒動でしばらくバタバタしていた社内も、最近漸く落ち着きを取り戻しつつあった。

その日奈緒は寝坊をしてしまい、弁当を持ってこなかった。

昼休みになると奈緒は秘書課の二人に言った。

「ちょっと下でお昼を買って来ますね」

「あれー？　今日はお弁当じゃないの？」

「はい、寝坊しました……」

「奈緒ちゃんがお寝坊するなんて珍しいねー」

恵子がケラケラと笑う。

恵子はだいぶ元気になり、いつもの恵子に戻っていた。

「もう恋愛はこりごり～」

以前恵子がそう言った時、奈緒は頷いた。自分も同じ心境だったから気持ちはよくわかる。

するとさおりがこんな風に言った。

「そう言ってる時ってねぇ、意外といい出会いがあったりするんだよ～」

「無理無理！　もうね、一人の方が絶対楽ですもん」

恵子はすっかり恋愛には興味がなくなってしまったようだ。

その代わりに、最近ゴルフを再開したようだ。

休日は大学時代のゴルフ仲間とコースへ頻繁に出かけている。

そのお陰で、恵子はすっかり真っ黒に日焼けし健康的に見える。失恋直後の恵子とは見違えるほどだ。

（やっぱり太陽の光に当たったり身体を動かしたりすると、精神的にも健康になるのかな？）

そんな事を考えながら、奈緒は財布を持って一階にあるコンビニへ向かった。

店内でサンドイッチとチキンのサラダを選んだ奈緒はレジに並ぶ。

するとすぐ前に井上がいた。

「あ、井上さん、お疲れ様です」

「お疲れっす！　お昼っすか？」

「はい。井上さんも？」

「はい。今日はコレっす」

井上は手にしていた唐揚げ弁当の特盛サイズを奈緒に見せる。

「ボリュームたっぷりで美味しそう！　あ、そういえば、大豊建設の件お疲れ様でした。井上さんが大活躍したって噂で聞きましたよ」

「いや、あれはたまたまっす」

「そんな事ないですよ、深山さんも褒めていましたから」

「深山さんが？」

そこで井上の顔がパァっと明るくなる。

その時、井上の会計の番が来たので会話は一時中断した。