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みるくちょこ🍫
拒否した瞬間、空気が変わった。
それまでの笑いは、遊びだった。
今のは――裁定だった。
「今の、聞いた?」
誰かが周囲を見回す。
確認するように、同意を集める仕草。
「嫌だって言ったよな」
「やめろ、だっけ」
別の声が続ける。
「つまりさ」
「逆らったってこと?」
遥は息を詰めた。
「……違う。俺は――」
「違わない」
被せるように、即答。
「“嫌だ”は拒否。拒否は反抗」
「反抗ってさ。一番、面倒なんだよ」
誰かが舌打ちする。
「最初から黙ってればよかったのに」
「今までそうしてたじゃん」
「急に人間ぶるなよ」
遥は歯を食いしばる。
「……言えって。
ちゃんと拒否しろって……」
その言葉に、笑いが返ってきた。
「あー、それな」
「“ちゃんと”な」
「ちゃんと拒否するってのは、“許される立場”のやつがやること」
「お前は違う」
指が、遥の胸元を軽く突く。
力はない。
でも、意味は重い。
「お前が拒否すると場が壊れる、空気が悪くなる、雰囲気が冷める」
「だから――」
一拍。
「罰が増える」
遥の肩が跳ねた。
「……意味、わかんない」
正直な言葉だった。
すると、諭すような声。
「わかんないなら教えてやるよ。抵抗しなかった時はさ、“使われるだけ”で済んでた」
「でも今は?」
間。
「“逆らった”」
「逆らうってことは、管理が必要になる」
「躾」
「再教育」
「面倒かけた分、重くなる」
誰かが言った。
「自業自得だよな」
別の声。
「だってさ、黙ってたら、ここまでならなかった」
「お前が言ったんだぞ? 嫌だって」
遥の胸が、ぎゅっと縮む。
(……俺が、言ったから?)
(拒否したから?)
「もう一回、整理しよっか」
指を折る音。
「拒否した。空気を壊した。場を止めた」
「つまり、全員に迷惑かけた」
「だから」
にや、と笑う。
「今からのは、“拒否した罰”な」
遥は、声を絞り出す。
「……じゃあ……どうすれば……」
一斉に、同じ顔。
“今さら何言ってるんだ”という顔。
「どうもしなくていい」
「もう遅い」
「一回でも拒否したら、“素直じゃないやつ”確定だから」
「素直じゃないのは、一番、扱いにくい」
「だから――徹底的にやる」
遥の視界が揺れる。
(拒否しなければ、よかった)
(でも……)
(拒否しなかったら)
(それはそれで――)
「ほら。また黙った」
「さっきは言えたのに?」
「やっぱりさ。お前、抵抗向いてないよ」
「中途半端に反抗するから、余計、酷くなる」
最後に、決定打の一言。
「覚えとけ。ここでは、抵抗=罪。拒否=挑発」
「黙ってれば“物”で済んだのに」
遥は、目を伏せた。
(……俺が悪い)
(ちゃんと拒否したのに)
(正しくやったのに)
(それが、一番の失敗だった)
拒否は、救いじゃなかった。
刑だった。
コメント
1件
うわあ……読んでて胸がぎゅっとなるエピソードだった。拒否が“反抗”にすり替えられて、そこから罰が発生するっていう理屈、すごくリアルで怖い。特に「黙ってれば“物”で済んだのに」って台詞が重すぎる。遥が「ちゃんと拒否したのに正しくやったのに」って自分を責める方向に行くのも、読んでて辛かった。この空気の作り方、本当に巧いなあ……。続きがすごく気になります。