テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
ガラス片に濡れた床の上で、遥は頭から血を流しながらうずくまっていた。誰かが慌ただしく教師を呼びに行き、ほどなくして保健室へと運ばれる。
だがその最中ですら、あの生徒の罵声は止まらなかった。
「マジで気色悪いんだよ、遥。血で床汚すなよ、掃除すんの俺らだろ」
「大げさに倒れてんじゃねえよ。死にたいなら勝手に死ね。わざわざ目の前で迷惑かけんな」
担架代わりに抱えられる途中でも、吐き捨てるように足を鳴らす。
周囲の数人も顔をしかめて、嫌悪の生徒の言葉に乗る。
「正直、同じ教室にいるの不快なんだよな」
「保健室なんか行かせる必要ある? ゴミはゴミ箱にでも捨てとけよ」
遥は声も出せず、頭の中に鈍い痛みと、その声の残響だけが響く。
(……俺は……そこまで……邪魔なのか……)
保健室に運び込まれても、なおその残酷さは尾を引いた。
手当てをしようとする養護教諭の背後で、生徒たちは小声で嘲り合う。
「教師の前だとおとなしいけど、本当はみんな嫌ってるんだよな」
「アイツがいる限り、このクラスはずっと暗い」
「空気が腐ってんの、全部あいつのせい」
遥の耳には届いている。耳を塞いでも、閉じられない。
(……消えろって、そういうことなんだ……俺が……いなければ……)
心臓の奥で、冷たい刃物に抉られるような自己否定が膨れあがる。