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コメント
1件
あ〜〜〜もう、この回エモすぎるんですけど!!!😭💕 日下部が「貸せ」「持ててねぇだろ」って無理に奪わずに距離保って一緒に歩いてるとこ、めっちゃ優しさにじみ出ててキュン死にした…!「倒れたらすぐ手が届く距離」って描写がもう、遥の落ち着かなさと一緒にこっちもドキドキしちゃうよ…!笑い声のシーンは胸がギュッてなったけど、日下部が何も言い返さずに一緒に歩き続けてくれてるのが救いすぎる…続き読みたい!
窓の外が少しずつ橙色に染まり始めていた。
保健室のカーテンが開き、保健室の教師が時計を見る。
「熱は少し下がったけど、今日は早退した方がいい」
遥はゆっくり起き上がる。
身体はまだ重い。
頭もぼんやりしている。
「帰れますか」
「……はい」
嘘だった。
帰れるかどうかではない。
帰りたいかどうかでもない。
帰るしかない。
その答えしか最初からなかった。
ベッドから足を下ろす。
床へ着いた瞬間、膝がわずかに揺れた。
見られないように力を入れる。
「無理すんな」
横から日下部が言う。
「平気」
反射みたいに返す。
「その平気、信用ねぇ」
遥は返事をしない。
保健室の教師は二人を見比べたあと、小さく息をついた。
「今日はそのまま帰りなさい」
遥は頷くだけだった。
鞄を受け取る。
肩へ掛けようとして、腕が止まる。
思ったより重い。
次の瞬間。
「貸せ」
日下部が手を伸ばいた。
遥は反射的に鞄を引く。
「いい」
「よくない」
「持てる」
「持ててねぇだろ」
「持てる」
短いやり取り。
保健室の教師は何も言わず、書類へ目を落としている。
遥は鞄を握る手へ力を込めた。
これくらい。
自分で持たなければならない。
誰かに持たせるものじゃない。
その考えが身体に染みついていた。
日下部は無理に奪おうとはしなかった。
「じゃあ歩け」
「……歩く」
「倒れるなよ」
「倒れねぇ」
その言葉とは裏腹に、保健室を出て数歩で足元が揺れる。
壁へ肩が当たった。
日下部は何も言わず、横へ並ぶ。
支えようとはしない。
ただ、倒れたらすぐ手が届く距離だけを保って歩く。
その距離が、遥には妙に落ち着かなかった。
昇降口までの廊下。
すれ違う生徒がこちらを見る。
「もう帰るのか」
「ずる」
「仮病じゃね」
小さな声。
笑い声。
遥は顔を上げない。
聞こえないふりをする。
聞き慣れた言葉だった。
日下部も振り向かない。
何も言い返さない。
ただ、遥と同じ速さで歩き続ける。
昇降口が見えた頃、遥はふと立ち止まった。
「……もういい」
小さく言う。
「ここまででいい」
日下部は足を止める。
「寄るとこあるから」
嘘だった。
寄るとこなんてない。
これ以上一緒にいるところを見られたくなかった。
その気持ちだけは本当だった。
日下部は遥の顔を見た。
その理由までは聞かない。
聞いても、本当のことは言わないと分かっているからだ。
「……分かった」
短く答える。
それ以上は追わない。
遥は小さく息をつく。
安心したのか、寂しかったのか、自分でも分からないまま、昇降口へ向かって歩き出した。