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教室の隅で、俺は固まって座っている。手首の感触はなくても、そこにある“縛られている”という感覚が消えない。

下腹部にまとわりつくローターの不快感が、じわじわと広がっていく。

触られているわけじゃないのに、まるで身体が勝手に反応してしまうみたいで、

その気持ち悪さに、目を伏せる。


周囲の囁き声が耳を刺す。


「あいつ、なんか変だよな」


「笑える」


冷たい視線が、俺の存在を一層小さくする。


言葉にできない嫌悪感と羞恥が交錯して、

身体の震えは止まらない。

けど、それを誰にも見せたくない。

必死で感情を抑え込もうとするけど、限界が近い。


「なんで……なんで俺なんだよ」


心の中でだけ呟く。声に出したら壊れてしまいそうで。


呼吸が浅くなり、胸が締め付けられていく。

どうしようもなく、孤独で、逃げ場もなくて。


壊れそうで、でも壊れたくない。

誰かに救われたいと思う一方で、救われることは許されない気がして。


俺はまた、ひとりで壊れていく。


体育。


体育館の床に響くボールの音が、やけに大きく感じた。

俺は身体にまとわりつくローターの違和感に耐えながら、無理やりバスケの試合に参加している。

動くたびに、身体の奥でざわつく気配が消えなくて、集中なんてできない。


みんなの視線が、俺の様子を探っているのがわかる。


「おい、あいつマジでおかしいぞ」


「気持ち悪っ」


囁きと笑い声が、まるで針のように刺さる。


息が荒くなる。足が思うように動かない。

バスケットボールを受け取っても、手が震えてうまく扱えない。

身体の内側から、何かが壊れていく感覚がする。


「見んなよ……」小さく呟く。


でも、誰も気にしちゃいない。


周囲の嘲笑と冷たい空気が、俺の胸を締めつける。

これがいつもの“支配”で、誰にも救いはない。


汗でじっとり濡れたシャツが、さらに違和感を増幅させる。

心はもう限界で、だけど必死で壊れないように耐えている。


このまま崩れてしまったら、もう戻れない。

それでも、俺はただ、前を向いて立っているしかない。



体育館の照明が眩しくて、視界がぐらつく。

胸の奥で、何かがじわじわと疼いているのがわかる。

走るたびに、身体の内部にまとわりつく違和感が増していく。


ボールを追うふりをしながら、頭は真っ白で、足は鉛のように重い。

誰かが笑い声をあげるのが聞こえた。


「おい、こいつ、なんかヤバそうだな」


「バカみたいに震えてるぜ」


汗で背中がべたつき、シャツが肌に貼りつく。

呼吸が浅くなって、吐き気がこみ上げる。

でも、周囲の視線が怖くて、顔を上げられない。


一瞬、立ち止まりそうになる。


「ここで倒れたら、終わりだ」


そう自分に言い聞かせて、足を前に出す。


でも、身体は思うように動かず、無理やり動かしているだけだとわかる。

中でずっとざわついているものが、俺を押しつぶそうとしている。


心臓が激しく鼓動して、吐きそうになるけど、耐えるしかない。


「声を出したら、俺は終わりだ」


けど、どうしてこんなに痛いんだ。

なんでこんなに苦しいんだ。


涙が勝手にこぼれそうになるのを必死にこらえながら、俺は走り続ける。




体育館の床に足を滑らせそうになりながら、俺は必死で走る。

胸の奥でざわつく気配がじわじわと強くなっていく。


「……っ、あ……」


思わず漏れた声に、すぐに顔を伏せる。

周りの目線が、一瞬だけ自分に集まった気がした。


身体が震えて、呼吸が浅くなる。


「っん……」


小さく唸るように声を漏らす。


それを見られたくなくて、すぐに唇を噛む。

心の中では「やめてくれ……誰か助けてくれ」と叫んでいるのに、声に出せない。


汗が頬を伝い、目の前の景色がにじんでいく。

でも、俺は止まれない。止まったら、全部終わってしまう気がして。



無名の灯 番外編

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