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「……もう、帰らせて……」
震える声がようやく出た瞬間、間髪入れず笑い声が被さった。
「は? 帰る? まだ終わってねぇだろ」
「お前、自分だけ満足して逃げようとしてんの?」
「礼儀知らずだなぁ、“接客係”のくせに」
誰かの足が背中を押しつけ、床に転がされた。まだ呼吸も整っていない身体に、重みが容赦なくのしかかる。
「なぁ、今度は掃除してもらおうぜ」
「おー、いいな。どうせ雑巾より使えるんだし」
「机も床もピッカピカにしてくれよ、口と舌でな」
「……や、やめ……」
声はかき消される。
水をぶちまけられ、床に大きな水溜りができる。
その上に顔を押しつけられると、冷たい水が口に入り、むせた。
「ほら、拭けよ」
「違うだろ? ちゃんと“吸って”から吐け」
「お前、そういうの得意だろ。なんでも飲み込むんだからさ」
背筋にゾワリと冷たいものが走る。
やめろと叫びたいのに、嗤い声と命令が重なり、喉が塞がる。
「ほら、雑巾。まだここ汚れてんぞ」
「遅い、もっと腰入れろよ!」
「そうそう、犬みたいに這いつくばってろ。よく似合ってるぜ」
笑い声が渦巻く。誰一人、止めようとする者はいない。
むしろ「次は何をさせるか」と楽しげに提案を繰り返す。
「なぁ、次は飲み物こぼしてやろうぜ」
「いいじゃん、床に垂らして全部舐めさせよう」
「人間以下のペットだしな」
水で濡れた床に、頬をこすりつける。鼻に入る匂い、舌に広がる冷たさ、嗤う声。
心の奥で、遥は何度も叫んでいた。
——やめろ。
——いやだ。
——でも……拒めない。
体が動かない。声も出ない。
ただ命令に従うように、震えながら舌を這わせ続けるしかなかった。
床に這いつくばったまま、遥の背中に手が何度も重くのしかかる。
「よし、その調子。犬みたいに頭下げてろ」
声は嗤い、命令は容赦ない。遥は顔を床につけ、震える手で水を拭こうとする。だがそのたびに蹴られ、押し倒される。
「顔、もっと床につけろ。尻尾振れ、ほら、ワンワン!」
「遅い、腰も動かせよ、犬のくせにのろまなんだな」
仲間たちの声が重なり、笑いと罵声が耳を塞ぐ。遥の心は、羞恥でひしゃげそうになりながらも、身体は思うように動かない。
「ほら、こぼれた水も全部舐めろ。飲みきるまで許さない」
舌先に冷たい液体が触れる。鼻に匂いが入る。嗤い声が渦巻く。
「お前、匂いも全部嗅ぎ取れよ、汚いペットなんだから」
遥の心は叫ぶ。
——いやだ、こんなの……
——でも動かない、止められない……
羞恥と絶望が身体を貫く。必死に目を伏せても、笑い声と命令が容赦なく迫る。
「まだだ、尻尾振れ! もっと犬っぽく!」
「その顔、もっと床に押し付けろ。お前の存在、消えそうなくらい小さくしてやれ」
全身を踏みつけられ、嗤われ、冷たい床に押しつけられる。
周囲の目はまるで興奮を楽しむ観客でしかない。
身体は痛みで反応し、羞恥は心を裂く。
「よし、その調子。次は窓拭きだ、頭も手も全部使え」
遥は言われるままに、床を舌で撫で、水を吸い込み、床の汚れを舐め取る。
嗤い声と命令は延々と続き、羞恥と絶望の中、遥はまるで“物”のように扱われ続けた。