コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
文化祭の日、俺は借り物のスカートを穿かされ、巻いた髪を無理やり整えられた。鏡に映った自分を見て、吐き気がした。笑え、と言われるけれど、顔の筋肉は固まったままだ。
「おい、笑えよ、客が来るぞ」
背後で嗤う声が刺さる。手に持ったトレーは微妙に震え、皿を落としそうになるたび、誰かが小さく叫ぶ。
「おい、雑だぞ!」
客が近づくと、クラスメイトが俺の肩を軽く押す。笑い声が一斉に響き、嗤いは波のように押し寄せる。必死に皿を支える手が滑り、さらに嗤い声が加速する。
「赤くなってるじゃねえか、可愛いぞ」
その言葉に身体が跳ね、顔が熱くなる。息を整えようとするが、嗤い声にかき消される。必死に笑顔を作ると、裏返った声で「い、いらっしゃいませ」としか言えない。
「もっと堂々とやれよ、客も見てるぞ」
肩を押され、スカートの裾を引っ張られる。立っているだけで、全身が晒され、笑いの標的になる。客の視線、クラスメイトの嗤い声、どれも逃げ場がない。
手元の皿がわずかに滑り落ち、全員が声を上げて嗤う。身体を縮め、顔を伏せるしかない自分の滑稽さが胸を締め付ける。息を整えようとするたび、笑いがまた押し寄せる。
「もっと表情豊かにしろよ、見せ物なんだから」
「は、はい……」
声は小さく、震え、嗤い声に埋もれる。必死に応えようとしても、全て利用されて消耗していく。逃げたい、でも逃げられない。
客が「可愛いね」と囁くたび、クラスメイトはさらに声を上げる。触れられなくても、視線と嗤いで心が抉られる。スカートの中の違和感、身体の震え、顔の熱、全て晒されている。
終わる頃には、鏡の中の俺は笑顔の仮面の下で震え、嗤いと羞恥に押し潰されそうだった。立っているだけで、存在そのものが消耗品のようだ。