野嶋隆は また夢を見た
……ような気がする
見たという感覚は、ある
感覚はあるけれど 証拠がない
事実はあるけれど 本質がない
どうやって夢を見たと 証明できるだろう?
もっと根本に立ち返れば
夢は夢だと証明できない 夢だと思っていたものが 現実なんてこともあるんじゃないか
自身が蝶になって宙を舞う
自身が人間として生活を送る
どちらが現実かと言われれば 人間としての自分を選ぶ
しかし そんなことが分かるだろうか?
それは あくまで願望に過ぎない
それでも人が人でありたいのは
たった一つの理由なのだと思う
それは
本質があるから
野嶋隆
野嶋は飛び起きた
全身が汗だらけだった
野嶋隆
さきほどの 考えている自分は夢だった
たったそれだけである
しかし 何をそんなに恐れているのだろう
汗をかくほど恐ろしいものか
……恐ろしいかもしれない
何かに追われたりする夢より ずっと怖いかもしれない
少なくとも 私はそう感じた
野嶋隆
野嶋隆
ずっと昔に覚えたことだ
もう忘れていたはずだが ふと、夢として現れた
私の深層心理が 何かを訴えているということか
野嶋隆
野嶋隆
野嶋隆
自分に言い聞かせるようにして
私は勢いよく立ち上がる
寝ぼけた眼はまだ冴えない
私は 思いついたように懐中時計を見る
時刻は7時25分
……まったく
ここに来てからというもの
早起きが板についてしまった
あまり若くはないけれど 作家業という職も関係して 夜な夜な起きているのはザラだった
本来の人間としての健康が 全く反した不健康な環境によって 取り戻されたことになる
どうにも複雑だった
野嶋隆
野嶋隆
昨日の感覚では 私と同じく早くに起きているものが多かった
しかしどうだろう
中村も新海も不眠だったし 神崎と新城は眠れたと言っていたが
正直なところ 眠れたとして質は最悪に違いない
今回は 若者たちの疲労困憊が祟って 一番乗りのような気がする
そう思いながら 長い廊下を歩いていると
食堂の扉が僅かに開いていた
どうやら、先着がいたらしい
野嶋隆
遠目に 扉の開いた隙間から見る
食堂の扉を開けるとすぐに 大きな丸机がある
その丸机を 私達は囲んで話をするのだ
誰かの後ろ姿が見えた
どうやら 椅子に座っているようだ
……そこで
私は食堂に入る前に 歩みを止めてしまった
その人物は確かに椅子に座っている
顔は扉とは反対方向を向いており つまりこちら側から見えない
しかし
"それは" 死んでいるということを悟った
いや、"殺されている"
そう判断したのは 首に麻縄がかかっているからだった
よく見ると項垂れていて 手に力は入っていない
野嶋隆
野嶋隆
野嶋隆
私は寝ているであろう 彼らを起こしに行った
野嶋隆
そう
"中村雨音"を除いて
花は摘まれた
静寂という言葉の重みは 彼女の死により際立った
もう この世にはいない
自然の秩序を疑うほどに 中村雨音の顔は穏やかであった
野嶋隆
神崎隼也
新城綾香
新海拓馬
新海拓馬
神崎隼也
新海拓馬
神崎隼也
新海拓馬
新海拓馬
新海拓馬
新海拓馬
新海拓馬
新海は顔を背ける
私は何も言えなかった
ただ 中村の死に顔を見ていた
彼女はとても素直だった
それでいて 一度決めたことはやり通す 頑固な一面もあった
密室の謎を解決したり 事件の夜にあったことを記憶していたり
解決に意欲的だった
真相を求めていた
それが今では……
野嶋隆
新城綾香
野嶋隆
野嶋隆
新海拓馬
新海拓馬
新海拓馬
野嶋隆
神崎隼也
野嶋隆
捜査は形式的に始まった
神崎隼也
野嶋隆
野嶋隆
神崎隼也
新海拓馬
神崎隼也
新海拓馬
新海拓馬
新城綾香
新海拓馬
新城綾香
野嶋隆
野嶋隆
新海拓馬
野嶋隆
新海拓馬
野嶋隆
新海拓馬
野嶋隆
新海拓馬
野嶋隆
新海拓馬
野嶋隆
新海拓馬
野嶋隆
野嶋隆
野嶋隆
新海拓馬
神崎隼也
野嶋隆
神崎隼也
新城綾香
野嶋隆
新城綾香
野嶋隆
新城綾香
新城は中村の右ポケットに手を入れた
あら、と声を出し 中村の手が触れていたらしいものを取った
野嶋隆
新城綾香
新城綾香
そう言いながら新城は 手鏡の蓋を開ける
開けた途端にぴたりと止まり 何やら鏡を注視している
野嶋隆
神崎隼也
新城綾香
新城は私たちに見えるように その小さな手鏡を見せた
そこには……
新城綾香
鏡の部分に小さな紙が貼り付けられ 几帳面な字で書かれている言葉
「犯人の利き手の方にこの手鏡を入れておきます!! 手鏡は大人の女を表す、ですよ!!」
それだけ書かれていた
新海拓馬
新海拓馬
野嶋隆
神崎隼也
新城綾香
新海拓馬
新城綾香
新海拓馬
そうか 中村は私達が食堂で食事をしたり 何かを飲んだりしている時や
普段から細かい動作をする際に 無意識に使う手……利き手を記憶していたと言うことだ
それだけではなく この発想を自らが殺された時のために 残そうとまで考えていた
殊勝な少女である
神崎隼也
神崎隼也
新海拓馬
神崎隼也
新海拓馬
神崎隼也
野嶋隆
新海拓馬
野嶋隆
神崎隼也
野嶋隆
野嶋隆
野嶋隆
野嶋隆
新海拓馬
野嶋隆
新海拓馬
野嶋隆
新海拓馬
神崎隼也
新海拓馬
新城綾香
新海拓馬
新城綾香
新海拓馬
新城綾香
新城綾香
新海拓馬
新城綾香
新海拓馬
神崎隼也
野嶋隆
野嶋隆
神崎隼也
新海拓馬
神崎隼也
神崎は昨日、中村がメモした 橘真衣殺害事件当夜の 各自のアリバイと証言内容 それをまとめた紙を渡した
新海拓馬
新海拓馬
沈黙
…が、やってきそうな間に 新城が口を挟んだ
新城綾香
野嶋隆
新城綾香
野嶋隆
新城綾香
野嶋隆
神崎隼也
神崎隼也
新海拓馬
野嶋隆
若い男2人は 中村の亡骸を持ち上げ
私達は中村雨音の部屋へと向かった
-中村雨音の部屋-
神崎と新海は ベッドに中村の亡骸を安置した
私達は少し憚られたが 部屋をくまなく調べた
すると、新城の予想通り 引き出しにそれはあった
新城綾香
野嶋隆
それは信憑性のあるものだった
先程のコーヒーカップを持った時の手 ミルクを入れる時の手 箸を使う時の手 広義に物を取るとき、掴む時の手 ジェスチャーを行う時の手
各項目ごとに分けられ 少しばらつきはあるが 統計的にまとめられていて、特定は可能であるようだった
それによると 野嶋-右手 神崎-左手 新海-右手 新城-右手 橘-右手 とされていた
野嶋隆
神崎隼也
新海拓馬
神崎隼也
新城綾香
新海拓馬
野嶋隆
新海拓馬
新海は顔面蒼白だ
先程から妙に落ち着きがない
それは自らが疑われる立場になってしまうからか……それとも
新海拓馬
新海拓馬
新城綾香
新海拓馬
新城綾香
新城綾香
新海拓馬
すると右利きである 新海か新城
この二人の中に……
新海拓馬
新海拓馬
新城綾香
新海拓馬
新海拓馬
新海拓馬
新海は吠えた
そして宣言した
新海拓馬
野嶋隆
新海拓馬
新海拓馬
野嶋隆
神崎隼也
その時 悪魔の笑い声がした
新城綾香
新城綾香
新海拓馬
神崎隼也
野嶋隆
激昂と歓喜 困惑と疑問
4人は壊れていた
新城綾香
新城綾香
新海拓馬
新海拓馬
神崎隼也
野嶋隆
神崎隼也
野嶋隆
野嶋隆
もうこうなっては引き下がれない
やるしかない
野嶋隆
私達は
野嶋隆
このマーダーゲームを
野嶋隆
私は
犯人でもない この舞台自体に
訴えた
野嶋隆
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