蓮司
なあ
少し間を置いて。
蓮司
……遥さ
遥
……
蓮司
お前さ、
自分のこと――気持ち悪いって、思ってる?
自分のこと――気持ち悪いって、思ってる?
遥はすぐに答えない。
日下部
急だな
蓮司
急じゃねえよ
ずっと顔に出てる
ずっと顔に出てる
遥は視線を落とす。
遥
……思ってる……というか……
言葉が途切れる。
遥
……そういうものだって…… 刷り込まれてる……
日下部
誰に
遥
……みんな……
蓮司
“みんな”便利だな
遥
……兄弟も…… クラスも…… 先生も……
日下部
直接?
遥
……直接……も…… 笑いながら……も……
蓮司
どんな言い方
遥は小さく息を吸う。
遥
……近づくな、とか…… 見ると不快、とか…… 存在が……
声が細くなる。
遥
……間違い、みたいだって……
日下部
……
蓮司
それ言われ続けたらな
遥
……だから…… 俺がそう思うのは…… 普通だと……
蓮司
普通じゃねえよ
遥
……でも…… 否定する材料が…… ない……
日下部
理由を探すな
それ、洗脳に近い
それ、洗脳に近い
遥
……分かってる…… 頭では……
沈黙。
遥が続ける。
遥
……気持ち悪いって…… 言われすぎると…… 最初は……傷つくけど……
蓮司
うん
遥
……そのうち…… “確認”になる……
日下部
確認?
遥
……今日も…… 俺は……ズレてるか…… 今日も……嫌われるか……
蓮司
それで?
遥
……嫌われると…… 安心する……
日下部
最悪だな
遥
……期待を…… 裏切らなくて…… 済むから……
蓮司
じゃあ聞くぞ
遥が顔を上げる。
蓮司
今ここで言われたらどうだ。
“気持ち悪い”って
“気持ち悪い”って
遥は一瞬、考えてから。
遥
……多分…… 何も……感じない……
日下部
……
蓮司
それが一番、
深く傷ついてる状態だ
深く傷ついてる状態だ
遥
……そうかも……
小さく、でもはっきり。
遥
……でも…… 俺が気持ち悪いって…… 思うことで…… 向こうが……正しくなるなら……
日下部
自分を差し出すな
遥
……慣れてる……
蓮司
慣れた結果がそれだろ
遥
……それでも…… 俺が…… 俺を…… 気持ち悪いって…… 言い続けてれば……
声が震える。
遥
……誰かに…… 言われる前に…… 済む……
沈黙。
蓮司が低く言う。
蓮司
それ、防御じゃなくて
自傷だ
自傷だ
遥
……分かってる……
日下部
じゃあ一個だけ覚えとけ
遥
……?
日下部
“気持ち悪い”って言葉は、
説明できない側が使う言葉だ
説明できない側が使う言葉だ
蓮司
お前の問題じゃない
遥
……それでも…… 俺の中に…… 残ってる……
蓮司
消えなくていい
遥
……え……
蓮司
“残ってる”って言えるうちは、
まだ飲み込まれてない
まだ飲み込まれてない
遥は、何も言わなかった。
ただ、少しだけ肩の力が抜けた。






